あいちトリエンナーレ2019

不自由展、作品に「不快」批判 天皇肖像燃やす表現 来場者「悪意に満ちていた」 愛知の芸術祭、企画展中止
2019.8.10 19:33

愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展
「表現の不自由展・その後」が中止になった問題で、
同展の異様さが改めて浮き彫りとなっている。元慰安婦を象徴する少女像などに加え、
昭和天皇の肖像を燃やすような動画が展示されていたためだ。
「表現の自由」をめぐる議論が活発化する中、特定の政治性を帯びた侮辱や冒涜(ぼうとく)、
ヘイト(憎悪)とも受け取られかねない作品に批判が相次いでいる。

「焼かれるべき絵」
問題の動画は、先の大戦を連想させる映像や音声が流れる中、
コラージュ画に使われた昭和天皇の肖像を大写しにして、ガスバーナーで燃やしていく-という内容。
燃え残りの灰を足で踏みつぶすシーンもある。
企画展が中止となる前日の3日、動画を流すモニターの前には人だかりができ、
来場者が顔をしかめたり、スマートフォンで撮影したりする姿もみられた。
説明書きなどによると、昭和61年、富山県立近代美術館(当時)に展示された
昭和天皇の写真と女性のヌード写真などを合成したコラージュ画が県議会で「不快」と批判され、
美術館は作品を売却するとともに図録を焼却処分した。それが今回、燃やすシーンを挿入した理由とみられる。
モニターの近くには「焼かれるべき絵」とのタイトルで、
昭和天皇とみられる軍服姿の、顔の部分が剥落した銅版画も掲げられていた。
来場した名古屋市の会社員男性は「結局、昭和天皇の戦争責任を問いたいのだろう。
悪意に満ちていて気分が悪かった」と吐露。
愛知県春日井市の自営業男性は「いくら表現の自由があるとはいえ、
天皇の肖像を焼くような動画を行政が支援するイベントで見せるのは行き過ぎ」と話した。
実行委員会の事務局には、少女像と同様に抗議のメールや電話が殺到した。

「2代前じゃん」
展示を問題視する声に対し、実行委の会長でもある愛知県の大村秀章知事は
「表現の自由を保障した憲法21条に違反する疑いが極めて濃厚ではないか」と批判。
抗議声明を出した各団体も、「憲法21条2項が禁じている『検閲』にもつながる」(日本ペンクラブ)など、
憲法21条を理由にした内容が目立った。
憲法21条は1項で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めている。
一方、12条は憲法が国民に保障する自由と権利について、
「これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と記す。
表現の自由が無制限ではないとの判例もある。
最高裁第3小法廷は昭和59年12月、「憲法21条1項は、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、
公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認する」としており、その後の裁判でも引用されている。
芸術祭の芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介氏は開催前の4月、
インターネット番組の対談で「(不自由展は)一番やばい企画になるんですよ。おそらく政治的には」と言及。
天皇の展示について「2代前じゃん」「人々の記憶も『2代前だし、歴史上の人物かな』
というようなとらえ方でできるかもしれない」などと語っていた。昭和天皇を指しているとみられる。

産経新聞は企画展の意図について津田氏に取材を申し込んだが、
同氏は「(芸術祭実行委事務局の)広報を通していただくことになっている」と回答。
10日午後までに広報担当から返答はなかった。

「日本へのヘイト」
物議を醸した今回の「不自由展」。厳しい見方を示す識者は少なくない。
昭和天皇の展示について麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は、
「わが国の『国民統合の象徴』である天皇の人格を汚す内容だったのは明らか。
表現の自由は『公共の福祉』の制約を受けるというのが通説で、
公序良俗に反する展示であれば当然、問題がある」と指摘。
津田氏については「初めから展示が問題になりそうだと予想しており、“炎上商法”の手法だ」と批判した。
ジャーナリストの門田隆将氏は「私自身も見たが、展示は明らかに日本に対するヘイトだった。
自由は崇高なものであり、民主主義社会において最も大切だ。しかし、だからこそ節度と常識を必要とする。
今回の展示に節度と常識があったとは思えない」と語った。


公金8億円投入、検証委設置へ
国内最大規模の国際芸術祭で、4回目を迎えたあいちトリエンナーレ(10月14日まで)には、
愛知県を中心に多額の公金が投入されている。今回は県が約6億円、名古屋市が約2億円を負担。
文化庁の補助金対象事業にも採択され、約7800万円が補助予定額となっているが、
国は県の交付申請を改めて精査する意向を示している。
トリエンナーレは3年に1度開かれる国際美術展を意味する。
日本でトリエンナーレ形式で開かれているイベントとして、
新潟県で平成12年から始まった「大地の芸術祭 越後妻有(えちごつまり)アートトリエンナーレ」や、
横浜市で13年にスタートした「横浜トリエンナーレ」が知られる。
愛知県では、19年の県知事選で、3期目を目指した神田真秋氏が
新たな文化芸術を創造・発信する国際的な芸術祭開催を掲げて当選。
20年に県を中心に実行委員会が設立され、準備が進んだ。
財源については、20年9月の県議会で、県が「基本的には県の一般財源でやっていきたい」と説明。
前回(28年)の芸術祭は、名古屋市と合わせ10億円を超える費用が公金で賄われた。
23年に初当選した大村秀章知事も、積極的に芸術祭をバックアップしている。
芸術監督は、7人の学識経験者で構成する芸術監督選考委員会が選考。
今回は29年7月にジャーナリスト、津田大介氏の就任が決まった。
「社会情勢を踏まえた明確なコンセプトを打ち出せる」
「ITに造詣が深く、国内外に強くアピールできる」などが理由という。
愛知県は9日、企画展中止などについて検証する委員会を設置すると表明。
16日に初会議を開き、11月末までに報告書をまとめる。

https://www.sankei.com/life/news/190810/lif1908100030-n1.html