「皇位継承」はどうなる? 国会議員へのアンケート

「皇位継承」はどうなる? 国会議員へのアンケート、結果発表
2019.10.24 07:00週刊朝日

安定的な皇位継承の形とは。悠仁さまのお子さまに期待する? 
女性宮家をつくる? 男系、女系はどうなる? 
国民の関心は尽きないが、議論が進んでいる様子はない。
そこで本誌は衆参両院の議員へアンケートを実施。
一家言を持つ5人の政治家らにも、それぞれの考えを語ってもらった。

「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」
現在の皇室典範は、そう定めている。「男系の男子」とは父方が天皇の血筋を引く男性のこと。
現在の皇位継承の資格者は、秋篠宮さま、悠仁さま、常陸宮さまの3人だ。
安定的な皇位継承を維持するためにはどうするべきか。

そこで本誌は、衆参両院の全国会議員708人に、
皇室典範の改正や女系天皇の賛否などについてのアンケートを実施した。
回答があったのは2割強の170人だった。

まずは結果を紹介しておきたい。

「愛子さまが天皇に即位できるように皇室典範の改正をするべきと思いますか」との問いに、
「するべき」と回答したのは28%、「するべきではない」は8%、「無回答・回答拒否」が65%だった。

賛成理由は、「愛子内親王殿下に対する国民からの大きな敬愛を感じているから」(自由民主・水落敏栄)、
「戦後、日本国憲法の下で国民が育んできたジェンダー平等を
さらに発展させるうえで、意義がある」(日本共産・本村伸子)など。

反対理由は、「男系男子による皇統が望ましいため」(自由民主・三ツ林裕巳)、
「憲法第1条『(天皇の地位は)日本国民の総意に基づく』に反する」(国民民主・牧義夫)などだった。

「愛子天皇が実現しない理由は何だと思うか」(複数回答可)の質問には、
「典範改正に向けた議論が進まないため」が22%、「男系男子による皇位継承を維持するため」が18%、
「保守派の政治家・知識人の反対が強いため」が15%と続いた。

女系天皇の賛否も尋ねた。女系天皇とは、母のみが天皇の血筋を引く天皇のことだ。
例えば、天皇陛下の子供の愛子さまが、
一般の男性と結婚し、子供が生まれると女系となる。歴史上、女系天皇はいない。
回答結果は、皇室典範改正の質問とほぼ同じで、
「賛成」が29%、「反対」が13%、「無回答・回答拒否」が58%だった。

賛成理由は、「悠仁さまに男子が生まれなければ皇位継承者がいなくなるから」(国民民主・徳永エリ)、
「(女系天皇を認めなければ)安定した親子継承を望む声が高まり、
特定の皇族女性が男子出産のプレッシャーにさらされ続け、苦しみが連鎖する」
(立憲民主・山尾志桜里)などだった。

反対理由は、「2千年以上の伝統を守るべき」(自由民主・稲田朋美)、
「万世一系の伝統を壊すと、天皇制が全くの別物となる」(自由民主・奥野信亮)など。

安定的な皇位継承の制度をつくるための具体的な案として出ているのは、
主に「旧皇族の皇籍復帰」や「女性宮家の創設」だ。
現在の制度では女性皇族は結婚すると、皇籍を離れることになっている。

それぞれの賛否を尋ねた結果は、「女性宮家の創設には賛成」は26%、
「旧皇族の復帰には賛成」が6%、「どちらにも賛成」が3%、
「どちらにも反対」が4%、「無回答・回答拒否」が62%だった。

女性宮家の反対意見としては、
「2700年近く存続する伝統の変更には、議論がたりない」(国民民主・関健一郎)、
旧皇族の復帰に反対の意見としては「旧皇族の子孫の方々と現皇室の血縁関係は極めて薄く、
30親等以上離れている。
憲法が定める『世襲』と呼ぶには無理がある」(国民民主・津村啓介)などがあった。

皇室典範の改正や、女系天皇、女性宮家に「賛成」の回答がやや多いが、
全体的に無回答・回答拒否が多く、政治家の間でも議論が深まっていない様子がうかがえる。
各党の姿勢を見ると、野党のほうが立場を鮮明にしているが、
立憲は論点整理をしただけで統一見解ではないという立場。自民や公明、維新は立場を表明していない。

天皇制の議論には独特の難しさを伴う。皇室制度を大きく変えるような議論をすると、
天皇制を強く支持する右派から街宣車などで激しい批判を受けたり、
身に危険が及んだりすることもある。
ただ、右派でも「議論を積極的にするべきだ」という意見もある。
民族派団体「一水会」の木村三浩代表は、「先を見こして考えておくことは愛国者の条件。
議論を妨げれば、国民の無関心を呼んでしまう」と語気を強める。

木村氏の立場は、皇室のこれまでの伝統を尊重し、男系維持を限りなく追求する立場だ。
旧皇族の皇籍復帰などを対策として考える。
しかし、万策を講じた上で女性天皇が誕生することは仕方がないとした上で、
皇室典範の改正をしておくべきだという。

「現行の制度では、皇室に嫁ぐ人に絶対に男子を産まないといけないという重い負担がかかる。
皇室典範を『皇位は、皇統に属する男系の男子による継承を第一義とする。
難しい場合は男系の長子とする』などと弾力的な制度にしておくべきだ」

著書に『<女帝>の日本史』がある原武史・放送大教授は
「明治以降の皇室典範の価値観に固執するべきではない」と主張する。
歴史をひもとけば、推古天皇といった女性天皇だけではなく、
皇后や将軍の正室など女性が権力をもってきた。

「女性権力者、いわゆる女帝は古来、連綿として日本に存在していた。
しかし、徐々に男系を重視する考え方が確立していった。
平安時代には血に対するケガレから女性天皇が忌避されるようになり、
明治以降は皇后などの女性の権力を良妻賢母的なものに矮小化(わいしょうか)してしまった。
男系イデオロギーで覆われた価値観を歴史的に相対化して、
この天皇制度をどうするのか根本的に考える必要があります」

国を思う気持ちは様々だ。異なる主張も理解しながら、冷静に議論を深めてもらいたい。

■女系天皇は南北朝の動乱招く/自民党・下村博文

「女系天皇は“南北朝の動乱”を招く恐れがある」
こう指摘するのは自民党の下村博文衆議院議員だ。
南北朝の動乱とは、14世紀に天皇家が京都の北朝と奈良の南朝に分かれ、正統性を主張した争いだ。
50年以上も分裂が続いた。

「女系天皇が生まれれば、必ずどこかから『男系男子こそが正統だ』という人たちが出てきてしまう。
そうなれば、国民が割れてしまう。天皇制の安定、ひいては社会の安定を大きく損なう可能性があります」
女系天皇に反対する立場の人たちが重視するのは、例外なく男系男子の継承を続けてきたというその歴史だ。
神話を含めれば2600年以上、諸説あるが学術的に存在がほぼ確実視されている継体天皇から数えても
1500年以上、男系の継承を続けてきたことになる。6世紀に武烈天皇が崩御した際には跡継ぎがおらず、
5代前の天皇にまで遡り、その男系の血筋を引く人物を天皇に迎えている。
ここまで一つの王朝が続いているのは、世界でも日本だけだ。
下村議員は旧皇族の皇室復帰などあくまでも男系を維持する方策をとるべきだという考え方だ。

「国というのは現在の人たちだけのものではなく、過去に生きてきた人たちや、
将来に生きる人たちのものでもある。
一度も例外なく男系男子が続いてきたということは、それだけで意味があり、
日本固有の伝統や文化を表している。旧態依然に見えるかもしれないが、
男女平等など現代の価値観だけで語るべきものではありません」

■皇室典範改正で愛子天皇は可能/国民民主党・玉木雄一郎

6月に皇室典範の一部を改正する案をまとめた国民民主党。
改正案は男系の女性天皇を認めるもので、
皇位継承順位は愛子さまが1位、秋篠宮さまが2位、悠仁さまが3位となる。
そのための女性宮家の創設も支持する。玉木雄一郎代表はこう語る。

「過去にも男系の女性天皇がいたことも踏まえれば、男系の女性天皇は認めていい。
愛子さまが天皇となって、悠仁さまにつなぐというのはあり得る。
男系男子にこだわれば、かえって国民の支持を失うし、皇統の継続性も危うくする」

眞子さまは今年28歳、佳子さまは25歳で、ご結婚なされば皇籍から離れることになる。
愛子さまも今年18歳で将来的にはご結婚も遠くはないと考えられる。
皇位継承に関して、悠仁さまのみに大きなプレッシャーがかかることになる。
玉木代表は「悠仁さまが生まれて安心してしまい、議論が小休止してしまった」とした上で、こう檄を飛ばす。

「天皇は国の象徴。この問題について熱心に議論している議員は野党側ばかりで、全体的に見れば少ない。
皇室問題を考えない国会議員はその資格はない。国会議員が主導して国民的な議論をしていくべきだ」

一方で、女系天皇の賛否については慎重な姿勢を見せる。

「歴史的にも先例のある男系の女性天皇を認めるべきだ。それに伴って女性宮家も整備する。
女系天皇については、長く続いてきた皇室の歴史の中でも例がなく、慎重に考えるべきだ」

■国際的に女系天皇の誕生ないと厳しい/碧水会・嘉田由紀子

前滋賀県知事の嘉田由紀子・参議院議員は、女性天皇を認めるべきだという主張だ。
女性天皇については歴史的に実在しており、国民の支持もある。
現在の「男性」に限る皇室典範には強い違和感があるという。

「この考え方は明らかに古典的な男尊女卑の考え方に基づいている。
女性だから天皇の役割を担えない、という考え方は今の時代の国民の思いに応えていないと思います」

女系天皇、女性宮家についても基本的には賛成の立場だ。
天皇制を維持するためには、こうした制度を認めないと天皇家が断絶してしまうと危機感を募らせる。
そこで嘉田議員が注目するのは、血がつながらない養子をとってつないできた伝統的な日本の家族制度だ。

「何百年と続いている老舗では必ず養子をとっている。名字を継がせて、家をつないできた。
つまり、血縁主義ではないということです。男系男子の血でつながらずとも、
天皇家として継続性があれば、混乱が起きるとは思えません」

日本では今、女性の社会進出が進み、活躍する人も多くなった。
イギリスやオランダなどの王室では、すでに女王が即位している。

「天皇は日本の象徴。だとするならば、社会の変化に合わせて女性天皇・女系天皇は認めるべきです。
認めないとなれば、女性の社会参画が進まないことにもつながってしまう。
美智子さまがご結婚されるときも民間出身の女性として初めて皇太子妃になられたため、
多くの抵抗があったが、それでも今は受け入れられている。
国際的にも、女系天皇が認められないという女性差別意識は逆に厳しくみられるでしょう」

■憲法上、皇族に基本的人権ない/元自民党政調会長・亀井静香

日本会議国会議員懇談会で副会長を務めた亀井静香・前衆議院議員は
「残念ながら、皇族の方々は一般国民と違い、憲法上、基本的人権はない」と主張する。

天皇としての活動は憲法や皇室典範によって規定されている。
皇位継承は世襲で、亡くなるまで天皇であることが基本だという。
結婚の自由などは様々な制約がある。なぜこうした制約が天皇や皇室にあるのか。

「制約があるのは歴史的な教訓を踏まえて、
明治になって伊藤博文が作った皇室典範で天皇を担いでの権力争いが起こらないように定められたもの。
変えようとすれば、混乱が起きる。できるだけ単純にしておいたほうがいい。
そもそも天皇の存在は憲法で生まれたものではない」

女性天皇については男系であれば認めてもいいという立場だ。
皇室が残してきた男系の血筋で、それが守られる限り、本質は変わらないという。

「歴史的な事実として、男系の皇族が天皇に即位してきた。それで万世一系の天皇制度が保たれた。
これからもそうあるべきだ。女系天皇を認めるとこれまでの皇室とは違ってしまう」

天皇の権威に影を落とすような制度は作るべきではないということだ。

「今の上皇陛下が退位するときも私は反対でした。高い山は富士山だけがあればいい」

■安倍政権は天皇の政治利用をしている/共産党・志位和夫

憲法の条項と精神に基づいて女性・女系天皇に賛成の立場を取るのが、共産党だ。
志位和夫委員長がこう説明する。

「国民の中には男性と女性ばかりか、さまざまな性のあり方があります。
多様な性を持つ人々によって構成される日本国民統合の“象徴”である天皇を、
男性に限定しなければならない根拠はありません。
したがって、戦前の規定のままの皇室典範の第1条を改正して女性天皇を認めることは、
憲法に照らしても合理性を持つと考えます」

すなわち、天皇を男性に限っている現状をただすことによって、国民の中の男女平等、
ジェンダー平等を推進していくうえでも意義がある、と主張する。

共産党は天皇を「君主」と捉えていないが、例えばヨーロッパの立憲君主の国々では、
女性の君主が認められ、性別に関係なく年長の子から継承権を認める制度もある。
「世襲」の問題を抱えながらも、制度改革は進められてきた。志位氏が続ける。

「私は女性・女系天皇の問題にかかわらず、
憲法に照らして改めるべき点はすべて議論していく必要があると思っています。
最もいけないことは“天皇の政治利用”です。
憲法4条には、天皇は『国政に関する権能を有しない』と明記しています。
安倍総理はことあるごとに『令和にふさわしい憲法改正の議論を』などと発言していますが、
元号が変わることと改憲は何の関係もありません。
あれこそ天皇の制度の最悪の政治利用というほかありません」

(本誌・吉崎洋夫、田中将介、亀井洋志)

※週刊朝日 2019年11月1日号

https://dot.asahi.com/wa/2019102300008.html