幻に終わった皇太子「訪韓」

来春の皇太子さま「訪韓」は実現するのか
(更新 2014/5/30 07:00)
皇太子さまのライフワーク「水の研究」をきっかけに、新たな歴史の一ページが開かれるかもしれない。
日韓国交正常化50年の節目にあたる来年、皇太子さまと縁のある国際会議
「世界水フォーラム」が韓国の大邱(てぐ)市などで開かれるのだ。
両国の長年の宿題だった皇太子「訪韓」が実現するチャンスとなるのか。
もともと同フォーラムと皇太子さまの縁は、第3回が京都で開催された2003年にさかのぼる。
当時、名誉総裁就任と記念講演をお願いしたのだ。
その後も皇太子さまは、06年のメキシコ、09年のトルコと続けて出席している。
フォーラムを主催するシンクタンク「世界水会議」の関係者は、期待を込めて話す。
「今回のフォーラム出席は簡単には進まないかもしれないが、
皇太子さまが参加しなければ、世界中に違和感を示すことになる。
皇太子さまが私的なご訪問としてフォーラムに参加すれば、
極めて自然な形で長年の懸案がクリアされるでしょう」
フォーラムに出席すれば、皇太子さまが開会式で短いメッセージを述べたり、
30分ほどの講演をしたりすることになる。
世界水会議の別のメンバーもこう話す。
「元首級の出席者が集う昼食会やレセプションパーティーへの参加が予想されます。
元首級の会議への皇太子さまの出席については毎年、われわれの中で話題に上るのですが、
その場で政治的なメッセージが出されても困る。そういった場とは一線を置いている」
長年水の研究を続けてきた皇太子さまは、
国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁の立場で、同フォーラムに出席している。
「過去の世界水フォーラムでは、皇太子さまへの招請状は、
開催の半年ほど前に日本の外務省宛てに出しています」(前出の世界水会議の関係者)
今年後半には皇太子訪韓の方向性がはっきりする。
韓国水フォーラムの事務局の担当者は、本誌の取材にこう答えた。
「日本の皇太子さまが水に関心があるということは知っています。訪韓されたら、それは光栄です。
各国への招待状は政府、外交ルートを通じて送ります。
これから関係部署と詰めながら作業に入りますので、少し先の話になります」
韓国外交筋もこう打ち明ける。
「まだ、(日本の外務省にあたる)外交部に、その案件は届いていないようですが、
皇太子さまが来られることは結構なことだという感触です。
しかし、政府が招請を出すまで、いま少し韓日関係を見極めたいようです」
韓国元外相で、駐日大使を務めた孔魯明(コンノミョン)氏(82)もこう話す。
「あくまで一般論ですが、皇太子さまの来韓は、韓日関係改善への追い風となるでしょう。
しかし、その前にすべきことがある。
韓日関係の懸案を解決するためにも、首脳会談への地ならしを早急に行うべきです」
元韓国大使の小倉和夫さん(75)もこう分析する。
「仮に皇太子さまが世界水フォーラムへ出席したとしても、それは国際会議への出席であって
『訪韓』ではないと、整理して考えることが必要です。それを前提とすれば、実現は可能でしょう」
同時に、小倉さんは次のような心配も口にした。
「まだ南北間の軍事的な緊張は続いていますし、沈没船事故で政権も不安定です。
こうした時期の『皇室外交』では、皇太子の訪韓を利用しようともくろむ勢力も出てくるでしょう。
重要なのは、政治とは無縁な韓国への訪問であると、国民にしっかりと納得してもらうことです」
※週刊朝日2014年6月6日号より抜粋
http://dot.asahi.com/wa/2014052800084.html


幻に終わった皇太子「訪韓」 南北統一しない限り実現不可能?〈週刊朝日〉
(更新 2015/2/19 07:00)
皇太子さまは今月23日、いまの天皇陛下が即位した年齢である、55歳の誕生日を迎える。
この節目に合わせるように、韓国から皇太子さま「訪韓」の招請状が届いた。
これまで何度もその機会はあったが、今回も日韓関係に改善の兆しは見られず、
平成皇室最大の課題ともいわれた「訪韓」は、幻に終わった。
元朝日新聞編集委員の岩井克己氏は、この「皇太子ご夫妻訪韓」問題を密着して取材してきた。
このとき、宮内庁参与として国際交流の分野で当時の皇太子ご夫妻の相談にのってきたのが、
歴代の韓国大使でもとりわけ韓国側に信頼が厚いと言われた須之部(すのべ)量三氏だった。
岩井氏によれば、須之部氏はこの件を踏まえて、天皇や皇太子の訪韓についてこう述べた。
「訪韓は、南北統一後か、南北同時訪問が実現するような時代にならない限り、難しい」
岩井氏は、正面から天皇、皇后が訪韓すべき重い歴史的課題だけに、
そうした環境にない現状では皇太子さまの「訪韓」は、やめたほうがいいと感じている。
「日韓国交正常化50年、戦後70年にあたる今年は確かに、絶好の節目ではある。
両陛下の年齢を考えれば10年後は難しいかもしれない。
しかし、節目の年でなくても両陛下が自ら訪韓される環境が整う可能性も消えてはいません」
ときに皇室は「最強の外交カード」(外務省関係者)とも称される。
自らがどのような立場に置かれても、両陛下をはじめ皇族方のスタンスは一貫して変わらない。
人びとに寄り添い、対話を続ける。
皇室は長い間、韓国への想いを示してきた。
戦前に梨本宮方子(なしもとのみやまさこ)女王(李方子[イバンジャ]さん)が朝鮮王室に嫁ぎ、
「日韓の架け橋」と呼ばれ、戦後も三笠宮ご夫妻や秩父宮妃が私的に訪韓するなど交流は続いた。
そして02年のサッカーW杯では高円宮ご夫妻が皇族として、初の公式訪問を果たした。
07年には、高円宮家の次女、千家典子さんも韓国を私的に旅行している。
両陛下は、皇室と朝鮮半島とのゆかりについて、幾度かお言葉で触れた。
天皇陛下は、01年の誕生日前の会見や10年の平城遷都1300年記念祝典で、
「桓武天皇の生母が百済(くだら)の武寧(ぶねい)王の子孫であると、
続日本紀(しょくにほんぎ)に記されている」と述べている。
皇后さまは、90年に、こんな歌を詠んでいる。
対馬より釜山(ふざん)の灯(あかり)見ゆといへば韓国の地の近きを思ふ
隣国はいつまで、近くて遠い国であるのだろうか。
※週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋
http://dot.asahi.com/wa/2015021800057.html