医師団の見解2005

(2005年12月9日 読売新聞)
皇太子妃殿下の現在のご病状に関する東宮職医師団の見解

 1 病名と治療方針
すでに発表しております「適応障害」という診断は、
国際的に広く使用されているアメリカ精神医学会の公式の診断分類
『精神疾患の診断・統計マニュアル第4 版改訂版DSM―IV―TR』に基づいて行ったものです。
DSM―IV―TRによれば、適応障害は、「はっきりと同定される社会心理的ストレス因子に反応 して、
臨床的に著しい情緒的または行動的症状が出現することである」と定義され、
うつ病や不安障害などの他の精神疾患の診断基準は満たさないが、著しい苦 痛を伴うものであるとされています。
適応障害はストレス因子(またはその結果)がなくなれば6ヶ月程度で解決するとされてはいますが、
慢性のストレス因子 などが原因になっている場合には長期間続くことがありうるとされており、
妃殿下の場合は後者に相当すると考えております。
 治療に関しては、環境に働きかけてストレス因子を軽減することが最も重要であり、
精神療法(カウンセリング)を行いつつ、補助的に薬物療法を行い、
気分転換なども活用することが望ましいとされており、妃殿下の治療もその方針にそって行ってきております。
 2 現在のご病状
妃殿下ご自身は、治療に対して非常に前向きで医師団の指示を守ろうと努力していただいており、
ご病状は着実に回復されてきております。
また、こうした治療 では、ご家族など周囲の方々のサポートが非常に重要ですが、
皇太子殿下が常にあたたかく、そして力強く支えて下さっていること
が最も大きい要素になっているものと拝見しております。
内親王殿下との間にしっかりとした心の交流がおありのことや、
天皇皇后両陛下に温かく見守り支えていただいていることも、治療の大きな助けになっております。
ご回復の兆候としては、その時々の心身の具合に応じて上手に考えや気持ちを切り替えられ、
柔軟に活動に取り組まれるようにもなっておられ、
ご関心のある学 問領域の書籍や雑誌をお読みになる機会も少しずつ増えてきていらっしゃいます
また、様々な行事にも徐々にご出席いただけるようになっていらっしゃいま す。
薬物療法に関しても、妃殿下のご努力もあって、服用量を減らせてきております。
しかし、その一方で、現時点ではまだご体調には波がおありで、
心身のストレスがご体調に影響を及ぼしやすい状態も続いております。
そのために、頑張って行 動しようとされてもその前やその時に強い緊張を感じられたり、
後でお疲れを感じられたりすることがあります。
したがって、妃殿下はご公務をまだ本格的に再 開できないことを心苦しく感じていらっしゃいますが、
医師団としては、続けてご公務をしていただけるまでにはまだ回復されていらっしゃらないと判断しております。
今後さらに回復していっていただくためには、発症に影響した環境面のストレス因子を積極的に取り除き、
ご活動の範囲を広げていっていただくことが大切になります。
以下に、今後の課題に関する医学的な立場からの見解について述べさせていただきます。
 3 今後の課題
妃殿下は、皇族としてのご自身の役割や皇室の将来を真剣に考えていらっしゃいます。
したがって、医師団としては、今後そうしたお気持ちを大切にしていただ きながら、
より望ましい形でご公務に復帰していっていただくことが重要であると考えております。
なお、ご公務の内容に関しては、皇太子殿下が先の御誕生日 にお示しいただいた方向で、
東宮職で具体的に検討していただくのが望ましいと考えております。
とくに現在は、妃殿下はご回復の過程にあり、
妃殿下のご体調をうかがいながらその時々で可能なものをお願いしながら、
焦ることなく徐々に復帰していっていただきたいと考えております。
ご公務と並行して、ご成婚前の知識や経験が生かされるような形でのライフワーク的なお仕事やご研究をされ、
それをご公務に生かしていっていただくことが、 今後大変重要になると考えております。
また、妃殿下が、ご自身の体験や知識を生かしてお力を発揮できるご活動を今後積極的に行われることは、
ご回復にとっ てはもちろんのこと、改善された後にも心の健康を維持されるために重要です。
育児とご公務の両立も今後の重要な課題です。妃殿下におかれては、ご流産に続くご妊娠、
ご出産と初めての育児に関連した心身のお疲れが残られているご出産 後間もなくから地方のご公務が始まり、
その後も地方行啓を含めた多くのご公務が続かれ、それがご病気の引き金になったものと考えられます。
とくにご公務の ためとはいえ、深い愛情を感じていらっしゃる内親王殿下とすごされる時間を
思うようにとれないことに、妃殿下はとても心を痛められたものと考えておりま す。
妃殿下は、ご公務の前にはご予定の調整やお出かけのご準備など、
ご自身でされなくてはならないことが多くおありです。
その一方で、ご家庭内のお仕事のほか に、東宮職から相談を受けながら
東宮内部の様々な懸案事項の処理などのご決定をされなくてはならず、
対外的なご公務以外にも非常に多くのことをされなくて はなりません。
したがって、今後のご公務に関しては、妃殿下が育児などご家庭で果たされる役割や、
妃殿下のライフワークになるようなご活動、ご研究とバランスをとりながら選んでいただけるように、
東宮職で慎重に検討していただきたいと考えております。
こうしたご公務やご研究に加えて、日常生活の中で興味を持って楽しまれることを
積極的に行っていただくことも大切です。
これまで妃殿下は、ご公務などのお 仕事を大切にしたいというお気持ちが強く、
私的なお楽しみを控えられる傾向がおありであったために、
意識されないうちに心理的な閉塞感を強く感じられるようになられたのではないかと考えられます。
しかも、妃殿下はお立場上自由な外出がかなわないために、必然的に情報遮断や感覚遮断の状態になられ、
それ自体 がストレスになるだけでなく、ストレスに対する抵抗力を弱められることにもなりました。
そうした状況を改善するために、医師団は、私的外出や運動を
可能な範囲で行っていただくようにご提案してきました。
妃殿下は最初、ご公務がおできになって いない状態で
私的な楽しみをもたれることに躊躇される面がおありでしたが、
こうしたご活動を通して心によい刺激を与えていただくことが
治療的に重要であるとの医師団の説明をご理解いただき、ご協力いただいております。
こうしたことはご病状の改善に役立つだけでなく、
心身の健康を維持していただくためにも重 要であると考えております。
医師団は、この一年あまり治療に携わらせていただきましたが、妃殿下がこれまでに直面されてきたストレスは、
医師団の想像以上に強いものであったというこ とをあらためて実感しております。
今後は、上に挙げた課題の改善に加えて、日常の生活でのプライバシーの確保や
ご負担の少ない取材設定の工夫など、ストレス要因の軽減についても改善を進めていただくことが、
妃殿下が心の健康をさらに取り戻していかれる上で不可欠であると考えます。
治療の成果が上がるまでに はなお時間が必要ですので、
東宮職をはじめとして妃殿下の周囲の方々の協力がとても重要です。
幸いなことに、多くの人たちが妃殿下のために、そして皇太子殿下や内親王殿下のために、
力をあわせてお手伝いをしていこうという気持ちを強くお持ちです。
医師団としては、そうした方々のお力を借りながらさらに治療を続けていく所存です。
特に、妃殿下におかれては、ご公務に伴う心身のご負担は、私的なご活動 の場合に比べて格段に強く、
次第に私的なご活動がおできになってこられることがそのままご公務につながるものではありません。
妃殿下は元来精神的健康度が 非常に高くていらっしゃり、順調なご回復の過程におありでもあり、
これまでのような前向きのご努力によって、たとえ時間がかかっても回復していかれるものと医師団は考えております。
現在はまだご回復の過程でいらしゃることを十分にご理解いただき、
静かに見守っていただければありがたいと考えております。

雅子さまの所感(全文)
今年の誕生日をこうして無事に迎えることができますことをたいへんありがたく思っております。
多くの皆様にご心配をいただいていることと存じますが、お陰様で体調も徐々に回復してきており、
公の場にも少しずつ出席することができるようになってまいりました。
これまで、天皇皇后両陛下に温かくお見守りいただいてまいりましたこと、皇太子殿下にはお忙しいご日常の中、
たえず傍でお支えいただいてきておりますことに心より感謝申し上げております。
国民の皆様から、様々な形で温かいお気持ちを寄せていただいていますことも、
私にとりまして大きな支えとなっており、たいへんありがたく存じております。
今年11月には、紀宮様がご結婚なさいました。このことはとても嬉しく、心よりお祝い申し上げております。
紀宮様には、私が皇室に入りましてからの12年 余りの間、
様々な面でお助けいただいておりましたことを度々思い、感謝の気持ちで一杯になります。
紀宮様が皇室を離れられましたことに寂しさも感じますが、
これからの新しいご生活でのお幸せをお祈りしたいと思います。
娘の愛子もいつの間にか4歳になり、日々の生活の中で見せるしぐさや言葉の中にも、
ユーモアや思いやりの気持ちがうかがえるなど、成長を感じております
早いもので、来年からはもう幼稚園に通うことになりますことに感慨を覚えます。
愛子が、誕生以来これまで、国民の皆様からの温かい祝福の中で成長してきていることを
たいへんありがたいことと感謝しております。
これからも、周囲からの協力を大切にしながら、
子どもが少しずつ成長していく姿を見守っていかれたらと存じます。
私自身も、お医者様をはじめ、まわりの方々からのお力添えをいただきながら、
少しずつ公務に復帰していけますよう、心身の快復に努めていきたいと存じます。