元号ってそもそも何?

ハルメク2019年6月号
世界丸ごと一問一答

Q元号ってそもそも何?

Aもともとは君主の権力を示すもの。
しかし天皇が「象徴」となった今、元号のあり方も変化しています。
退位は、周囲への負担を減らしたいという
上皇陛下らしいご配慮とも考えられます。

4月1日に248番目の元号「令和」が発表され、5月1日に改元されました。
昨年末あたりから何かと「平成最後」が謳われ、新しい元号の予想で盛り上がり、
いよいよ新元号が発表されるとお祭りムードで沸き立ちました。
一方、昭和から平成への改元はどうだったでしょうか。
もっと物々しい雰囲気だったと感じた方もいるかもしれません。
元号については、元号法が次のように定めています。
「1、元号は、政令で定める」「2、元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める」。
この皇位の継承については皇室典範の第4条で次のように定められています。
「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」。
つまり改元は天皇の崩御と裏表。
次の元号予想で盛り上がるなど、昭和ではとんでもないことでした。

数年に一度!?
江戸時代までの改元
元号の根底には、君主が時を支配できるという考え方があり、その起源は中国です。
これが日本に導入されたのが645年。
当時、天皇をも凌ぐ権力をもっていた蘇我入鹿を中大兄皇子と中臣鎌足が暗殺。
元号を「大化」と制定しました。
大化という元号は天皇家が権力を掌握した象徴でもあったのです。
以来、代々の天皇が元号を定めてきました。
しかし当時の元号は今と様子が違います。
天皇の代替わりと同時に改元するのは今と変わりませんが、国の繁栄と平安を願う意味合いが強く、
吉事があっては改元、災害が起こっても改元していました。
江戸時代の明和9年には災害が多く、「めいわく」年だと揶揄されて改元しています。
そんな調子で数年に一度のペースで改元が行われ、
また武家政権下では権力を持っていた幕府が実質的に改元を握っていました。
状況が変わったのが明治時代です。
幕府から権力を奪取した新政権下で、明治天皇は「一世一元の詔」を出し、
明治へと改元。同時に天皇の在位中は元号を変えない「一世一元の制」が始まりました。
権力の象徴である元号を、天皇以外が勝手に変えられないようになったのです。
またその後、旧皇室典範が制定され、天皇は終身制となりました。
こうして改元は天皇の崩御と表裏一体の「一大事」となった結果、
役所などさまざまな場所で元号が用いられるようになりました。
特に昭和は64年と長く、人々の意識に深く浸透しました。みなさんの中にも
過去を思い出すときに「あれは昭和30年頃だから」と、西暦よりも昭和を用いる方もいるかもしれません。
実は1947年に制定された新皇室典範では、日本国憲法の趣旨も踏まえて、
元号に関する項目は削除されています。元号の法的根拠がなくなったのです。
それでも先述の元号法が制定される79年までの約30年間、日本人は元号を使い続けたわけですが、
それもやはり昭和が暦として浸透していたからでしょう。
特に昭和天皇は戦前まで神として扱われていました。
その名残か、昭和が永遠に続くような感覚を抱いていた人もいたでしょう。

自粛ムードのご懸念からか
その昭和が終わったとき、日本に衝撃が走りました。
人間の心理的に慶事と弔事が同時に来ると、弔事が優先されます。
昭和天皇が崩御されたとき、形としては新元号に移行したものの、
企業CMや娯楽番組がテレビから姿を消したり、
お祭りなどの催しが中止されたりと自粛・哀悼ムードが広がりました。
そのことへ懸念を抱いていらしたのが現在の上皇陛下でしょう。
退位のきっかけとなった、2016年8月8日の「おことば」では次のようにおっしゃっています。
「(前略)天皇の終焉に当たっては(中略)喪儀に関連する行事が、1年間続きます。
その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、
行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません」。
在位中の天皇が崩御すると大規模な葬儀が行われ、社会や家族に負担がかかる。
だから存命のうちに退位したいというご意向は、
これまでも陵墓の縮小を希望されてきた上皇陛下らしいご配慮とも考えられます。
上皇陛下は、現憲法のもとで初めて即位して以来、「象徴」として天皇のあり方を
考え続けられてきました。今回の退位について、政府は皇室典範の「特例法」という形で、
現在の上皇に限った対応としていますが、令和以降も今回の改元が前例として踏襲される可能性があります。
西暦が普及し、また天皇が象徴となった今、元号を廃止すべきではという意見もあります。
確かに改元には役所の仕様変更やシステム改修が必要ですが、
社会的に大きな実害を与えるかといえば、そうではないように思います。
憲法は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、
この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」としています。
天皇は国民の総意、つまり支持する心が基盤です。
元号も使いたいと思う人が使い続ける形で存続するのではないでしょうか。
(この記事は2019年4月11日時点の情報をもとに執筆しております。)


坂東太郎
1962(昭和37)年生まれ。
毎日新聞記者などを経て、ニュース時事能力検定講師、十文字学園女子大学講師などを務める。