小桜姫物語より

七十三.参拝者の種類
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時代の変化は、こちらから見ていると実によくわかります。
心霊のあるのか無いのかさえあやふやな人たちが
形式的に頭を下げても、らちがあきません。
神社もうでで一番大事なのはやっぱり真心です。
たとえ神社にまで行かなくても、
熱心に念じてくだされば、ちゃんとこちらへ通じるんですから。

参拝者の中で一番数も多く、ある意味美しいのは、
やっぱり何の注文もせずにお礼に来る方々でしょう。
『毎日安泰に暮らさせていただきまして、誠にありがとうございます。
明日からも何とぞ無事に過ごせますようお願いいたします。』

でもどんなにたのまれても、人間の寿命ばかりはどうにもなりません。
ずいぶん一心不乱になって神様におすがりしても、
死ぬ時はやはり死んでしまいます。
そんな場合、平生から心がけのよいものは
『これも因縁だから仕方ありません。』なんて、立派にあきらめてくれますが、
中にはずいぶん性質《たち》がよくないものもいます。
『あんな神さまはダメだ。いくらたのんでもちっとも効かないじゃないか。』
なんてことを言って、挨拶にも来ないんですから。
それがまたこちらによく通じるんですから笑っちゃいます。
やっぱり人物の善悪は、
物事がうまくいったときよりもいかなかった時の方がよくわかりますね。

もちろん神の援助にも限りがありますけど、
それがあるのとないのとでは大違いです。
もともと神霊界があってはじめて人間界が成り立っているわけですから、
今さら人間がつむじを曲げて神様を無視することなんてできないんです。
そんなわけで神様の方ではいつもちゃんとお膳立てをして、待っていてくださるんですよ。


七十八.神々の受持ち
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現世の方々が、何はさておいても一番に心得ておかなければならないのは、
産土《うぶすな》の神様でしょう。
これはつまり土地の守護に当たられる神様でして、
その本体は始めから生き通しの自然霊、つまり龍神様なんです。
現に私たちの土地の産土様は神明様といいますが、
やっぱり龍神様です。
どうやらこちらの世界の仕事は、
人霊のみでは何かにつけて不便があるのではないかと感じられます。

さて産土の神様の仕事の中で何より大事なのは、人間の生死の問題です。
この世の役所では、子どもが生まれてから初めて出生届を受け付けますが、
こちらでは生まれるよりずっと以前から、
それがおわかりになっていらっしゃるようです。
何といいましても、一人の人間がこの世に生を受けるというのは
すごく重大なことですから、このような場合は産土の神様から、
上の神様、さらに上の神様へと順々にお届けがあり、
最終的に最高の神様まで情報が伝達されるんだそうです。
言うまでもなく、これから誕生する人間には必ず一人の守護霊がつけられますが、
これも皆上の神界からのお指図で決められるように聞いています。

それから人間が亡くなる場合に第一に受け付けてくださるのも、
やはり産土の神様で、誕生だけが決してその受け持ちではないんですよ。
これは氏子としてぜひ心得ておかなければならないことと思います。
とは言ってもそのお仕事はただの受け付けだけで、
直接帰幽者をお引き受けくださるのは
大国主命《おおくにぬしのみこと》様です。
産土神様からお届けがあると、大国主命様の方では
すぐに死者のあらゆる状況を見定め、それぞれ適当な指導役をつけて下さるんです。
指導役はやっぱり龍神様ですね。
人霊ではどうかすると人情味があり過ぎて、
こちらの世界の指導をするのにあまりうまくいかないようです。
私も一人の龍神さんの指導にあずかったことは、先ほど来お話してきたとおりです。
これは私だけのことではなくて、どんな人だって皆お世話になるんですよ。
つまり現世では主として守護霊、幽界では主として
指導霊のお世話になるものと思われたら間違いありません。

ちなみに生死以外にも産土神様のお世話になることも多いですね。
すなわち産土神様は、万事の段取りを取ってくれる
総合受付のようなものと言えばお分かりいただけるかしら。
病気には治療専門の神様、武芸には武芸専門の神様がいるし、
そのほかこの世のありとあらゆる分野には、
それぞれ受け持ちの神様が控えていらっしゃいます。
人はとかく自分の力だけで何でもできるように考えがちですが、
多かれ少なかれすべての事象の陰には神様のお力添えがあるというわけなんです。

すべての神様の上には皇孫尊《こうそんみこと》様が控えておられます。
このお方が大地の神霊界の主宰神であられるからです。
さらにそのもう一段階奥には、
天照大神様がお控えになっておられますが、
それは高天原《たかまがはら》、
すなわち宇宙の主宰神でありまして、
とても私たちからは計り知ることのできない、それはそれは尊い神様なんです。


小桜姫物語