逝きし世の面影

逝きし世の面影
渡辺京二 平凡社ライブラリー
P136

カッテンディーケだけではない。
中国に比べれば日本は天国だという感想を述べている欧米人は、実は多くて挙げきれないほどなのだ。
若きボーヴォワル伯爵はいう。
「ああ、あのように不潔、下品なあの中国を離れて間もない今、
どんなに深い喜びの気持ちで日本への挨拶をすることであろうか」。
彼にとって中国は「死の平原」だったのである。
「われわれはシナで一年を過ごしたが、その王国に比べればすべて日本の方が優っていた」
と書くのはオリファントである。
またシッドモアにとっては、中国・朝鮮のあとで訪れた日本は「夢のパラダイス」に思えた。
そしてきわめつけはモラエスである。
「支那に永らく住んで、その背景の単調、その沿岸の不毛、ピエル・ロティが『黄色の地獄』と言った、
ヨーロッパ人がひどく厭う恐しく醜い人間の群が、
汚い暮しをしているあの支那の部落の不潔を見慣れた者にとって、
この日本との対照はまったく驚嘆に値するものだった」。