朝鮮人労働者強制連行と「創氏改名」

すいとく(穂徳)第718号(平成26年5月1日)
時評 正眼・心眼
朝鮮人労働者強制連行と「創氏改名」
皇學館大学現代日本社会学部 教授 新田均

歴史問題についての韓国からの非難は相変わらずだ。
論点はいくつもあるが、今回は二つの問題について記してみたい。
一つは「朝鮮人強制連行」なる問題で、戦前、朝鮮人を無理やり労働者として日本に連れてきたとの批判である。
確かに国家総動員法に基づく国民徴用令が内地で施行されて以降、朝鮮人が内地へと労働動員された。
その中身は昭和十四年~十六年の「募集」、昭和十七年~十九年九月の朝鮮総督府による「官斡旋」、
それから昭和十九年九月~二十年三月までの「徴用」に分かれる。
この内「強制」と言えるのは七カ月だけ行われた「徴用」だけだ。
この「徴用」以前に“人さらい”的な「強制連行」がなかったことは、
当時の日本が朝鮮からの密入国労働者に悩まされていた事実からも明らかだ。
昭和十四年~十七年の間に、政府は一人当たり二円~三円の費用を使って一万九千人を朝鮮に強制送還している。
自ら密入国してくる朝鮮人が多数いるのだから、わざわざ“人狩り”などする必要はなかった。
一方、「徴用」は日本内地では昭和十四年から実施されていた。
これを強制連行というなら、日本人は昭和十四年から六年間も強制連行されていたのに、
朝鮮人は七カ月だけだったことになる。
そもそも、労働動員というのは、多数の日本人の若者を戦場へ送ってしまたために生じた
労働力不足を補うための施策で、日本の若者が強制的に“戦場”に連れていかれた時に、
朝鮮の人々は日本の“職場”に連れてこられたに過ぎない。
どちらに対して過酷だったかは言うまでもないだろう。
もう一つの「創氏改名」は、朝鮮人の姓を無理やりに日本式に変えさせたという問題だが、
これを理解するポイントは、韓国人の「姓」と日本人の「氏(苗字)」とは違うということだ。
朝鮮人の「姓」は男系の血筋を表す記号である。
結婚しても自分の父親は代わらないので姓はそのままで、夫婦別姓ということになる。
他方、日本の「氏(苗字)」は家族という単位を表す名称なので、当然、夫婦になれば同氏(同苗字)となる。
つまり「姓」と「氏(苗字)」は本来別物なのだ。
となると、日本式の「氏(苗字)」を新たに創ったからといって朝鮮人の「姓」を消す必要はなかった。
「創氏」は、朝鮮人の「姓」を奪ったのではなく、別に新たに日本式の氏(苗字)を持たせるという政策だった。
しかも朝鮮総督府内で、朝鮮人に日本名を名乗らせる日本人と区別できなくなって困るという強い反対があり、
南次郎総督が「創氏改名」は強制しない、警察も協力しなくてもよい、と明言している。
さらに、道知事は十三人中五人が朝鮮人で、その内の二人は朝鮮名のままだった。
このように、警察も協力しなければ、地方官僚のトップも朝鮮名を使い続けるという状況なので、
朝鮮人から「姓を奪う」などということができるはずもなかった。