地球温暖化で中国に流れる三千億円

WiLL2008年5月号 総力特集 中国の暴走が止まらない!
京都議定書の愚
地球温暖化で中国に流れる三千億円
宇都宮慧 中国研究家


京都議定書は、2008年1月から約束期間に入った。
1990年を比較対象にして、2008年から12年までに平均およそ5.2%のCO2削減が定められており、
この期間のことを「約束期間」という。
また、昨年12月3~5日、インドネシアのバリ島で187カ国、1万1千人が参加して
国連気候変動枠組条約第13回締結国会議(COP13)が開かれ、
2013年以降の、いわゆる「ポスト京都議定書」の枠組みに関して国際協議が行われた。
この3月5日、福田総理は国別総量目標や排出量取引に関して検討するため、
官邸で「地球温暖化問題に関する有識者懇談会」を開催した。
今年7月、久しぶりに日本で開かれる洞爺湖サミットでは、地球温暖化問題が最重要課題であることから、
福田総理がサミットのための準備を開始したのである。
そうしたなかで、関係者の間で恐れられていたことが、次第に現実のものとなってきた。
それは、日本が官民併せ、中国・ロシアに巨額の現金を支払うという事態である。
その金額は、算定方法やCO2の単価にもよるが、約2兆円前後、もしくはCO”単価の高等具合によっては
約5兆円という数字を予想している機関もある。
かつて湾岸戦争のとき、日本は130億ドルの現金を支払いながら、誰からも感謝されることすらなかったが、
今回はそれをはるかに凌ぐ現金を中国・ロシアに支払ってもなお、
日本は京都議定書の約束を守らなかった国として世界中からバッシングを受けることになる。
京都議定書が「平成の不平等条約」と批判される所以である。なぜそうなっただろうか。


チャイナ開発メカニズム
日本が中国・ロシアに巨額の現金を支払う背景は三つある。
一つは、「クリーン開発メカニズム(CDM)」と呼ばれるものだ。
先進国が、途上国に技術と資金を提供し、CO2削減事業を行えば、
その削減分を自国の削減分として換算することができるというルールが
京都議定書のなかに盛り込まれている。
日本の鉄鋼業界は、京都議定書締結後、自主行動計画を策定し、
「90年比マイナス10%」という厳しい自主目標を掲げた。
かつて「鉄は国家なり」と言われた産業界の雄として模範を示したのである。
そして、激しい国際競争に勝って中国に鉄を輸出することで日本の不況を回復することに大きな貢献をした。
だが、中国の輸出が予想より増えて増産したため、数千億円の省エネ投資を行ったにもかかわらず、
CO2排出量は自主目標を下回る見通しとなった。
このため、削減目標に足りない4千4百万トンの排出枠を購入することとなり、CDMルールに基づいて中国の工場に対し、
過去数年間、省エネ技術を無償供与し、かつ約1千億円を支払った。
また、電力業界はここ数年、地震などの理由で原子力発電所の多くが停止したため、
CO2を多く排出する火力発電を稼動させ、自主目標を達成することが苦しくなった。
このため1億2千万トンの排出枠を購入することを余儀なくされている。
いまの相場1トン当たり2千円で計算すれば、中国に省エネ技術を無償供与し、
かつ2千億円を支払わなければならない計算だ。
日本政府も06年から排出枠の購入を進め、07年末で1億トンを購入(268件)し、08年は308億円の予算を計上している。
鉄鋼業界と電力業界が、京都議定書は「平成の不平等条約」「国の環境外交の失敗」だと激しく批判する所以である。
CDMとしてCO2削減に換算するためには、各国が国連に申請し、審査を受け、承認されることが必要であり、
本年2月15日時点で世界で941件が承認されている。
うち約50%の案件が中国、次いで約15%がインドである。
そのCDM案件は、商人が日本にやってきて、新日鐵などを訪問して売り歩くのである。
取引が成立した暁には商人は手数料を得る訳だが、それに投資家が目をつけ、
最近、ここに投機マネーが流入するようになった。
すなわちブローカーがあらかじめ中国などからCDM案件を購入し、その価格を釣り上げて日本に売るのである。
日本は、京都議定書の約束を達成しなければならないという足下を見られ、格好の鴨にされている。
中国政府は、CO2の売買単価を価格統制し、その売上げに課税して国家収入としている。
CDMは、中国の工場が日本の省エネ技術をタダで入手し、かつ現金も同時に得られるため、
「エネルギーをたくさん消費する古い工場を金の成る木に変えた」と言われている。
中国人は、「『月餅』が空から降ってきた」と喜んでいる。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)関係者の間では、
CDMは、「チャイナ開発メカニズム」という陰口で呼ばれている。
現在、京都議定書のメリットを最も享受しているのは中国と言っても過言ではない。
京都議定書に参加していないため、CO2は排出し放題で、
しかもCDMで日本からどんどんと省エネ技術と現金が転がり込んでくるのである。
だが日本が中国に支払った現金が実際には何に使われたのか、
果たしてCO2削減効果が期待どおりだったのか、何も検証できない。


なぜロシアは加盟したか
二つめの背景は、京都議定書の削減目標以上に削減できた国から、余剰枠を購入する「排出量取引(ET)」である。
日本は2月27日、ロシアと取引交渉の第一回目を東京で開いた。
日本は既にハンガリーと覚え書きを結んでおり、チェコやポーランドとも協議を進めている。
東欧の旧社会主義国は老朽施設を多く抱えているので、簡単に大幅なCO2削減が可能だからだ。
京都議定書の目標を達成するには、約束期間の5年間で10億トンの購入が必要とされ、
現在のCO2市場価格で購入すればCDMとETと併せて2兆円と算定されている。
ロシアは、京都議定書締結の97年当時のCO2は90年比マイナス38%であったが、
京都議定書では「90年比0%」と約束し、差し引きプラス38%の増加分を確保した。
しかもロシアは2004年まで京都議定書を批准しなかった。国内の省エネが進んだことを見届け、
かつ日本がマイナス6%を達成できそうにないことを見届けて、
日本から巨額の現金を手に入れる見通しがついたので2004年1月になって批准したのである。
「55カ国以上が批准すること、かつ、批准した国のCO2排出量の合計が削減業務の合計の55%以上になること」が
京都議定書が正式に発効する条件とされており、ロシアの批准によりそれが満たされて正式発効となった。
三つめの背景は、2月9日、日本で開催されたG7において日米英の3カ国で、環境技術を
途上国に移転する数十億ドル規模の基金の創設を、各蔵相が表明したことである。
日本は、1月26日のスイス・ダボス会議で福田総理が基金に拠出することを表明している。
米国は1月28日のブッシュ大統領による一般教書演説で、基金に3年間で20億ドルを拠出することを表明している。
この基金は、中国における古い発電所の閉鎖などに用いられる。


小泉と川口の大罪
日本人は「環境に優しい」などと言われれば、素直に信じ込んでしまうが、国際政治はそのような甘いものではない。
CO2排出抑制問題は、国同士の利害と国益をかけた野獣の戦いなのだ。
まず、その前提をしっかりと認識する必要がある。
いま日本は、京都議定書で約束した「90年比マイナス6%」を達成する見込みがたたずに世界中から激しい批判の的にされ、
最終的には中国・ロシアに巨額の現金を支払わなければならない状況に追い込まれつつある。
どの国からも誰からも感謝されないばかりか、巨額の代価を支払ったからといってCO2削減にはほとんど貢献しない。
世界的に見れば、CO2排出抑制問題は、1990年代に欧州で
政治的に優勢になった左派勢力が熱心に唱え始めた問題である。
反戦・反核・反原発・環境保護といった運動の流れをくんでいる
それに呼応する形で、日本国内では、CO2排出抑制問題は、朝日と赤旗が熱心に書き始めた。
彼らは、いずれ日本がこのような立場に追い込まれることを知っていたのだ。
米国では、議会がその矛盾点に気づき、共和党が政権を取ってブッシュ大統領が誕生すると、
いち早く京都議定書から離脱した。だが日本政府は、逆に京都議定書にのめり込んでいった。
なぜ、このようなことになったのだろうか。
京都議定書の交渉当時、日本外交は、「顔が見えない」、「主導権を取らない」と言われていた。
しかし、「京都議定書」だけは唯一、日本が主導権を取れる分野として期待され、
COP13の会議を京都宝ヶ池の国際会議場に誘致することに成功したことで、
さらなるうえは、日本の主導で議定書をとりまとめ、日本外交の存在感を発揮しようと先走った。
結果、交渉当事者は先の見通しを誤ったのである。京都議定書をとりまとめることだけを優先し、
日本の国益のために席を蹴って退席するなどということは、よもや考えてもいなかったことだろう。
しかし、交渉当事者は、将来日本にどのような事態が発生するか、よく知っていたはずである。
だが、問題が顕在化するのは、京都議定書の約束期間である2008年から2012年頃という約十年後であり、
問題を解決するのは後輩達だ、という無責任な考えだったのではと疑わざるをえない。
京都議定書をとりまとめた川口順子環境庁長官(当時)は、その功績を認められ、小泉総理から外務大臣に任命された。
が、得意の英語を用いてとりまとめたことが評価されたのであって、
日本だけが大幅に譲歩し、将来、日本を国難に陥らせる不平等条約であったなどという中身は無視された。
だが、いまやその二人も、当時の環境庁の幹部も表舞台から引退してしまっている。
そして、いまもし鉄鋼業界や電力業界が、京都議定書は「平成の不平等条約」などと発言しようものなら、
朝日や赤旗は、環境を犠牲にして会社の利益を優先する資本家の言い分だとして激しく攻撃するだろう。


大統領選に利用したゴア
米国内の政治事情は単純だった。CO2地球温暖化危機説は、
環境重視の政党というイメージを打ち出したい米国民主党(中心はアル・ゴア)の
政治的プロパガンダであった。
共和党ブッシュ候補と大統領選を戦うための政治的広報宣伝材料でしかなかった。
もともと、CO2地球温暖化危機説は、NASAの大気学者ジェームズ・ハンセンしか唱えていなかった説で、
それにアル・ゴアが飛びついたのである。
アル・ゴアやジェームズ・ハンセンの説がいかに科学的根拠がないか、代表的な事例を一つ挙げよう。
アル・ゴアの『不都合な真実』のなかで、60年後には海面が6メートル上昇すると書いている。
だがIPCC第四次評価報告書では、百年後の海面上昇が計算機シミューションで予測されていて、
それによれば、海面上昇は18~59センチである。温暖化による海面上昇の影響は微々たるものでしかない。
それなのに、科学的根拠もなく6メートル上昇すると言い、「世界地図を書き直さなければならないだろう」と、
まるで多くの土地が水没するかのように不安を煽っている。「不安」は恰好の選挙材料となる。
国民の不安を煽り、その対策をしっかりやる大統領は自分である、とPRできるからである。
だが、米国議会は、欧州の狡猾な作戦をよく分析し、アル・ゴアの本心を見抜いていた。
そのため、アル・ゴアが京都に赴く前、1997年7月、
米国上院でバード民主党議員とヘーゲル共和党議員が提出したバード・ヘーゲル決議を全会一致で決議した。
アル・ゴアが属する民主党議員も全員賛成したのである。その内容は、「米国経済に深刻な影響を与える条約、
発展途上国による温暖化防止への本格的な参加と合意が含まれない条約は批准しない」というものであった。
すなわち、米国議会は、アル・ゴアに対して、「京都議定書は批准しないぞ」と言って京都に送り出したのである。
アル・ゴアは、政治家としての晩年を汚され、大統領選挙にも落ちてはらわたが煮えくりかえっているのだろうか。
否、彼は環境を守る悲劇のヒーローとしてノーベル平和賞を受け、政治家生命を維持することが出来たのである。


EUの狡猾 
地球温暖化による被害が最も深刻なのは欧州である。グリーンランドや南極の氷が割れて大量の氷が海に落ち、
メキシコ暖流が止まり、北米と欧州が寒帯になる。
アル・ゴアが、知りたくないが知らなければならない「不都合な真実」と言っているのは、
このことなのである。
欧州は地球温暖化を止めるために真剣にならなければならない背景がある。
だが、EUは狡猾な外交手腕を発揮して、CO2排出抑制を、他国に押しつけた。
大幅なCO2削減は経済発展を圧迫することになるからである。
EUの最も狡猾な点は「基準年を90年とした」ことにあった。
なぜなら、90年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一化されたからだ。
90年がEU域内においてエネルギー効率が最低の年だったのである。
90年を基準にすれば、京都議定書が締結された97年までの間、
東ドイツのエネルギー多消費の古い発電所を多数閉鎖したため、ドイツは90年比マイナス19%になっていた。
京都議定書でドイツは、「90年比マイナス8%」で合意した。
なんのことはない、ドイツはプラス11%の増加分を確保したのだ。
米国も同様に、98年当時は90年比マイナス13%であったが、「90年比マイナス5%」で合意し、
差し引きプラス8%の増加分を確保した。
重いCO2抑制の義務を負わされたのは、日米加であった。
アメリカとカナダは、それぞれ98年当時は90年比プラス15%とプラス19%であったが、
「90年比マイナス7%とマイナス6%」で合意し、差し引きマイナス22%とマイナス25%という重い削減義務を負った。
だが、米国代表として参加していたアル・ゴアにとっては、どのような数字で合意しようと、
議会は批准しないと言っているのだから、もはや関係なかった。
日本も、98年当時は90年比プラス13%であったから、「90年比マイナス6%」を受け入れるということは、
差し引きマイナス19%という重い削減義務を負ったことになる。
京都議定書が日本とカナダにとっていかに不公平で理不尽な協定か、
そして日本政府がいとも簡単にそれを受け入れたということは、
いかに外交の手柄を焦っていたか、ご理解頂けるだろう。
カナダは、削減義務を放棄した。いまでは日本だけが、忠実に約束を果たそうとしている。
「日本人はなんてばかなんだろう」というEUの交渉当事者の薄ら笑いが目に浮かぶようだ。


お人よしも極まる日本人 
EUの狡猾さを表す好例が、もう一つある。それは、EUは国ごとに削減率を約束したのではなく、
EU全体で8%削減を約束したことだ。
それにより、ある国が28%削減することで帳尻を合わせることが可能となった。
しかも京都議定書締結以降にEUに参加した国が古い設備を廃止してCO2を削減すれば、それも算入可能であった。
EUの狡猾な外交は、バリ島で開かれたCOP13においてもいかんなく発揮された。
EUは、90年比で2020年に25~40%削減を目標として採択するよう各国に迫った。
旧東欧諸国にはいますぐにでも閉鎖したほうがいいような、古い発電所が多く存在している。
それらを閉鎖するだけでEUは簡単に目標を達成出来る。しかも「基準年90年」は変えないという。
彼らの目的は、EU以外の国でCO2を抑制させようということである。
世界のなかでCO2の排出比率は、米国が30%、欧州が28%であり、日本はわずか3.7%しかない。
その日本が6%削減したからといって、3.7%×6%=0.2%しか削減できないのに、
世界に何が貢献できるというのだろうか。
また、京都議定書を批准した国が排出するCO2は世界全体の36%しかカバーしておらず、
しかも総量で5.2%削減を約束するものである。
すなわち京都議定書を完全に達成しても地球全体では36%×5.2%=1.9%のCO2削減効果しかない。
なんの役にも立たないのである。
日本人は本当に真面目で、温暖化によって外国が深刻な影響を受けると言われると、
自分自身の生活を切りつめてエネルギー消費を減らそうとするが、
それでは温暖化が進めば、わが国には一体どういった影響が出るか、ご存じだろうか。
IPCC第四次評価報告書には、東アジアに対する温暖化の影響として、「穀物生産量が最大20%増加し得る」、
「主として洪水と旱魃に伴う下痢性疾患に起因する地方的な罹患率と死亡率は、
地球温暖化に伴う水循環の予測される変化によって増加するであろうと推定される」、
「沿岸の海水温度が上昇すると、コレラ菌の存在量及び/又は毒性が増加するであろう」と記述されているにすぎない。
わずか、これだけでしかない。
日本人は、温暖化によって、具体的に自分たちにどのような負の影響が出るのかよくわからないにもかかわらず、
朝日や赤旗のプロパガンダやメディアに乗せられて、
達成不可能な「90年比マイナス6%」の目標を「いい格好して」受け入れた。
そしてそれが達成出来ずに、世界中から激しいバッシングに遭い、
最終的には中国・ロシアなどに2兆円を超える現金を払わなければならない状況に追い込まれつつある。
京都議定書では、もし約束を守れなかった場合には、約束した削減量を超えた分を1.3倍し、
次の約束期間に上乗せして減らさなければならないという罰則がある。
いまのところ、この罰則が適用される見通しなのは日本だけ、である。
だが誰も政府の失政を批判しようとしない。むしろ逆に、腰が引けていると批判する声の方が大きい。
戦後の平和ボケもここに極まれり。本当に人がいいとしか言いようがない。


気温予測の致命的欠陥
IPCC第四次評価報告書には、百年後の気温と海面上昇が計算機シミュレーションで予測されている。
それによれば、気温が1.2~4.2℃、海面上昇が18~59センチである。
その中間をとって、2.7℃と38センチの上昇というのがIPCCの予測ということである。
まず、その予測はどの程度正しいのだろうか。確かに計算機を回し続ければ、
一千年後の予測値だって計算結果は出るが、誰も信じないだろう。
例えば日本の計量経済学者の英知を結集して作った内閣府の経済予測モデルを回して、
十年後の景気を予測して当たったことがあるだろうか。
翌年度のGDPでさえ当たらないのである。
否、明日の天気予報さえ当たらない。いまから百年前の1908年に、もし計算機が存在したとして、
いまの人類の姿を計算機シミュレーションで予測することが出来ただろうか。
IPCCに参加した科学者は、1.2~4.2℃、18~59センチの上昇という計算機予測が一体どの程度の精度を持っているのか、
その計算機予測は一体何年後くらいまでなら予測値として耐えられるのか、科学者の良心として説明すべき責任がある。
だが誰も語ろうとしない。
日本から計算機シミュレーションに参加した(独)海洋研究開発機構の地球シミュレータ・研究グループは、
きちんと国民に説明すべきである。
実は、百年後の気温を予測したシミュレーション・モデルは致命的な欠陥を持っていると、雲の専門家は指摘している。
我々が普段生活していて体験することだが、雲が切れて太陽が顔を出すと気温が急に上昇する。
すなわち、ガスとして気温を上げる効果は、CO2よりも雲の方がはるかに大きい。
雲が1%減少すれば地球の温度が1度上昇するという雲の専門家もいるくらいである。
太陽活動が活発化して太陽風が強くなれば吹き飛ばされて雲が減少する。
計算機シミュレーション・モデルには、そういった雲の動きを記述するモデルが組み込まれていない。
それで一体、どうやって百年後の気温を予測できるのか、と雲の専門家は言う。 
もし仮に2.7℃と38センチという上昇値が正しかったとして、
それがどの程度の影響を持っているのか、理解しなければならない。
ちなみに、札幌と那覇の平均気温の差は14.2℃。2.7℃の温度上昇ということは、
百年かけてゆっくりと日本列島が全体の約五分の一だけ南方向へ移動するようなものである。
また大阪では地盤沈下のために過去百年で2.6メートル地面に対して海面が上昇している。
もっと言えば満潮と干潮との差は約2.8メートルである。
IPCC第四次評価報告書では、温暖化の影響で過去百年間で7センチ海面が上昇していると報告しているが、
その影響はほとんど話題にされない。
それ以上の大きな海面の上昇に隠れてわからなかったのである。
それでは、将来百年間の38センチの海面上昇はどの程度の影響がでるのだろうか。


氷解けても海面上がらず
マスメディアは、巨大な氷が崩れ落ちる映像を流したり、東京水没などと、
温暖化が進めば海面が一気に上昇して日本の多くが海面下に沈没するのではないかという不安を煽っているが、
それは全く科学的根拠がない不安の扇動に過ぎない。
第一、北極のように水に浮かんだ氷が溶けても水面は変化しない。アルキメデスの浮力の原理である。
IPCC報告書にも、北極の氷が溶けて海面が上昇するとは書かれていない。
IPCC 報告書には、「陸の上の氷」が溶けると影響が出る、と書かれているに過ぎない。
しかも、気温が上昇すれば海面から蒸発する水蒸気も増えるので、その効果で海面は下降する。
その水蒸気が再び氷の上に降り積もり氷が成長する。
一方、気温が上昇すれば陸の熱膨張よりも水の熱膨張の方が大きいので海面が上昇する効果がある。
温暖化すれば海面が上がるか、または下がるかは、それら全ての効果の相殺の結果なのだ。
IPCC第四次評価報告書には、1993年から2003年の間に海面が毎年3ミリ上昇し、
そのうち、熱膨張による上昇分が二分の一、陸氷の融解が二分の一と記載されている。 
だが、環境省が発表する「環境白書」には、20年間にわたって、
温暖化すると北極や南極の氷が溶けて海面が上昇するという記述が載っており、
これに疑問を感じた武田邦彦中部大学教授の研究室の学生が電話で環境省に問い合わせたところ、
翻訳の間違いだったと回答したという。
だが、IPCC第四次報告書が出たいまでも、西岡秀三氏(環境省所管の国立環境研究所参与)は、
「『北極の氷が解けたら海面が上がると主張する研究者はおかしい』などという指摘をされていますが、
懐疑論として成立していません」と述べるなど、科学者自身が正しい科学的事実を発信していない。


ツバルは水没しない
またマスメディアは、南太平洋の島国ツバル(人口約1万人)が水没の危機に瀕していると紹介しているが、
満潮と干潮との差が約2.8メートルあるなかで、温暖化の影響で過去百年間で7センチしか海面が上昇していないのに
水没するなどということはありえない。
ツバルは土壌が珊瑚礁から出来た軟弱な地盤であり、ビキニ諸島で行われた原爆実験の衝撃により地盤が緩み、
地盤沈下しているのが原因と見るのが正確な実態に近い。
またグリーンランドの氷が解けていることがTVなどで紹介される。
10~12世紀、グリーンランドにはその名に相応しく草や木が生えていて農場があり、
北欧のバイキングの拠点となっていたが、16~17世紀に寒冷化して現在のような氷の大地になった。
いま氷が解けているのは、昔の状態に返っているとも言える。 
かつてオゾンホールの問題でマスコミが騒いだことがあったが、状況は全く変わっていないのに、
いまでは誰も問題にしない。
マスコミが国民の不安を煽った好事例である。
日本は科学技術立国を標榜しているのだから、事実を無視してイデオロギー論争にせず、
科学的根拠のある議論を展開しなければならない。 
日本でCO2が増加した最も大きな原因は、パソコンと大型TVの導入が進んだこと、
一家庭でかつては一部屋にしかなかったエアコンが、
いまでは全室に設置されていること、そして自家用車が増えたことである。 
国民が一斉に、パソコンとエアコンと車の使用を中止すれば、それだけで京都議定書の目標は簡単に達成出来る。
国民のライフスタイル自体がCO2を排出しているという「不都合な真実」を国民に知らさなければならない。 
勘違いしないで欲しいが、私は温暖化の進行に対して何もしなくていいと言っているのではない。
自然条件が変わると大きな影響が出ることは明らかであり、その影響を可能な限り減らすための対策は必要である。 
だが、例えば緑豊かな大地だったエジプトが砂漠化したように、これまで地球は大規模な自然環境の変化を繰り返してきた。
地球は生きており、常に大規模な自然環境の変化が起きる。
人間はこれまでもこれからも自然の変化に自らを適用して生きていくしか方法がない。 
こう考えると肩の力がぐっと脱け、温暖化を抑制するために人類が、
一体、どこまで金を投じるのが適当か、というラインも見えている。


中国とインドに最大の責務
昨年11月7日、国際エネルギー機関(IFA)が発表した2007年版「世界エネルギー見通し」によれば、
2030年における世界のCO2総排出量は419億トン、
うち中国が2007年に米国を抜いて世界一となり114億トン(世界の27%)、
第二位が米国で69億トン(16%)、第三位がEUで42億トン(10%)、
第四位がインドで33億トン(8%)、第五位がロシアで20億トン(4.7%)、
そうしたなかにあって日本は12億トン(2.9%)に過ぎない。
2005年から2030年にかけて世界全体のCO2排出量は58%増加するが、中国は126%増加する。
インドも200%増加するなど増加率が著しい。
2005年から2030年までに増えるCO2の増加量のうち、中印の二カ国で56%を占める。 
このようにみると、これから最も重点的にCO2排出を抑制すべき国は中国であることが自明である。
中国は第十一次五ヶ年計画で2006年から2010年までGDP単位当たりのエネルギー消費を
2005年比で20%削減する目標を掲げたが、2006年はわずか1.3%の削減しか達成できなかった。
やる気がないとしかいいようがない。
例えば鉄鋼分野を挙げてみたい。中国の鉄鋼生産量は毎年約3000万トンの勢いで伸び、
2006年には4億2000万トンに達した。
約3000万トンとは、新日鐵一社分に相当する生産量だ。驚異的な生産量の伸びである。
日本の高炉は平均内容積が4000立方メートルであるが、
中国は東ドイツや東欧で使わなくなった100~400立方メートルの小型高炉を輸入して使っている。
小型だから規模の経済性に欠け、しかも東ドイツ製でエネルギー効率が極端に悪く、
鉄鋼1トン当たりのエネルギー使用量は日本の約1.5倍もある。
中国は膨大なエネルギーの無駄使いをしているのである。 
日本の産業界はかつて石油ショックのとき、血のにじむような省エネ努力を行った。
中国にも同じことをやってもらおうではないか。 
それだけではない。もし中国の鉄鋼生産量がいまの倍の8億トンに達したら、
世界中の鉄鉱石が消えて無くなってしまうのである。
さらに、中国では野焼きコークス炉が用いられており、
そこから出る硫黄分を含むガスが日本上空にも達し、酸性雨を降らせている。
12月3~5日、バリ島のCOP13で日本は、日本自身が総量目標値を掲げることよりも、
米中印といった京都議定書に参加していないCO2多量排出国を含め、
全加盟国がポスト議定書に参加することを第一優先目標として交渉に臨んだ。
そうした日本政府の姿勢に対して、朝日や赤旗は激しい批判を加えたが、
これまで述べたとおり、科学的根拠からすれば、日本政府の方針が正しい。
これから官邸を中心に洞爺湖サミットに向けた準備が行われるが、
今度こそ、手柄を焦って京都議定書の二の舞になることだけは避けて欲しいものだ。
そしてこれからの重点対策国は中国であることをしっかりと見据えてサミットに臨んでもらいたい。