日本の皇位継承の特徴

朝日新聞平成17年10月28日
■三者三論 ~ 女性天皇どう考える 現制度の方が皇室安定
長根英樹氏 きもの和文化プロデューサー

女性・女系天皇を容認すれば、神武天皇以来125代も続いてきたとされる皇位継承の根幹を変えることになる。
日本の皇位継承の特徴は「直系優先ではない」という点にある。
英国など欧州では直系の相続が主流。男子優先とされる英国王室でも基本的には直系の枠を超えた相続ではない。
これに対し、日本の皇位継承のルールでは直系に女子しかいない場合には、傍系男子が継ぐ。
自らの子に皇位を相続させたいと考えるのが自然な感情だが、それを認めない。
いわば天皇直系の家族だけでなく、傍系の親族の協力によって成り立っている。
背景には「皇位の由来は時の天皇本人にあるのではなく、先代から預かっているものだ」という意識がある。
直系優先、直系独占主義でないからこそ皇族の兄弟間、世代間のつながり、協力が機能する。
皇族全体で皇室の役割を果たす「和」が生まれてくるのだ。
直系から傍系に皇位が移ると、国民のなかには違和感を覚える人がいるかもしれない。
皇室典範の改正を進める有識者会議も、直系から傍系に皇位が移ることを「不安定」だとする。
しかし、むしろ現在の制度の方が皇室に「和」を育み、国民の皇室に対する意識を高め、
将来的に皇室を「安定」させることになる。
直系から傍系への継承は、国民が皇位がどのように受け継がれてきたかを改めて確認する機会になる。
自分たちの世代の都合だけで物事を考えてはいけないという意識を皇室も国民も共有できる。
皇位継承ルールを変えるということは、こうした考え方を含め、日本のあり方、日本の歴史を変えることになる。
非常に重く、厳粛なことだ。
男系男子の維持を唱えるときに「何代も長く続いてきた」と説明するだけでは不十分だ。
いまの制度に「和の心」や「互助」を重んじる日本の伝統が生かされており、
皇室の「無私の心」ともつながっている点を重視すべきだ。
私は、主宰しているホームページにもこうした論文を掲載しているが、
「男系男子に限られている理由や伝統の文化的価値がよくわかった。共感する」とのメールを頂く。
ところが、有識者会議は今年1月から14回程度の開催だけで、「女性・女系天皇を容認する」という結論を出した。
扱う問題の重みをあまりに軽視した姿勢ではないか。
秋篠宮殿下より敬宮愛子さまが皇位継承順位で上位にくるような議論を進めていることも問題だ。
生まれたときから継承順位で皇太子殿下に次ぐ立場にあり、
いつ何時、皇位を継ぐかもしれぬ覚悟と重責を背負ってきた秋篠宮殿下と、
またそうした期待のもとに何十年もの歳月を経てきた皇室と国民の営みをないがしろにする。
有識者会議は「帝王学」や日々の心構えの重さを、安易に考えていないか。
現在の皇位継承資格や継承順位には立ち入るべきではない。
この問題で政治家の発言が乏しいことも心配している。本来、国会議員全員が参加する特別委員会などを設け、
有識者を参考人として招いたり、全国で公聴会などを開き、数年間をかけて議論を展開したうえで、
国民総意による結論を得るべきだ。
明治の皇室典範の改正は、皇族会議と枢密院顧問によって行われるしくみだった。
現在は国会で改正できる法律だが、十分慎みをもって運用すべきで、見直しは皇室の考えをうかがうべきだと思う。
(聞き手・松田史朗)


長根英樹
和の国、和の心 ― 天皇陛下と日本