「生前退位」のご意向について 報道直後の雑誌記事

週刊朝日2016年7月29日号
8月に天皇陛下自ら「生前退位」を説明か 5年前に摂政を内々に調査
天皇陛下が明治以降初となる「生前退位」の意向を示している──。
7月13日夜にNHKが報じた「スクープ」を受けて、世間は騒然となった。
高齢に無理を押しての天皇の公務と、次代の皇太子が世間でいう60歳定年に差し掛かろうとしている現実。
陛下自ら説明するとの話が出ているが、その内容とは……。
「年齢のこともありますから、私たちも疲れてしまったわ」
数カ月ほど前、皇后さまは、親しい知人にこう漏らした。
両陛下と親交のある人たちの幾人かは、こうしたため息を耳にしている。
天皇陛下は82歳、そして皇后さまは81歳。ともに高齢の両陛下の日程は、執務や公務でほぼ毎日埋まり、
心身ともに休むいとまもない。両陛下は11日から神奈川県にある葉山御用邸に静養のため滞在していたが、
この間も天皇陛下は執務を続けていた。
そして両陛下の静養が続く13日、NHKが午後7時のニュースで、
「天皇、皇后両陛下が、生前退位の意向を持っている」と報じたのだ。
新聞・テレビの皇室担当記者が詰める宮内記者会は、蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。
だが、宮内庁も首相官邸側も当初から一貫して「報道されたような事実は一切ない」と否定を続けた。
14日の会見で、宮内庁トップの風岡典之長官は、
「陛下は憲法上の立場から制度について具体的な言及を控えており、そういう事実はない」と発言。
天皇は国政に関する権能を有しないと定めた憲法第4条を引き合いに出し、
官邸の政権幹部も「憲法上の問題から(皇室典範改正を伴う)生前退位は無理だ」と語った。
肝心の陛下の胸中はどうなのか。風岡長官や山本信一郎次長、そして宮内庁幹部は、
「陛下のお気持ちを第三者が、あれこれ忖度するわけにはいかない」と口をそろえる。
それでも、冒頭のように両陛下が気力、体力ともに衰えたとの嘆きを周囲に漏らしている話は聞こえてくる。
実際、昨年夏の全国戦没者追悼式や他の式典で、
天皇陛下がお言葉や式典における手順のタイミングを誤ったことが注目された。
その件が念頭にあったのだろう。天皇陛下は、12月の誕生日会見で
「年齢というものを感じることも多くなりました」と語った。
「生前退位」問題では、NHKはすでに第一報の段階で、
「陛下が自らお気持ちを公表したいと考えている」とまで踏み込んだ。
皇室担当の記者が言う。「実際、陛下は、ご自身の状況をご自分の言葉で、
国民に説明したいと願っていらっしゃるようです。
それが3.11のときのように、陛下のビデオメッセージになるのか、文書になるのかはわかりません。
すでに、陛下の文書の内容も大筋は固まっているとの情報もあります。
あとは公表の時期。早ければ8月とも言われています」
陛下が、「退位」「譲位」という表現を用いたかはわからない。
天皇家の家族会議などで皇太子さま、秋篠宮さまも了承しているとも言われている。
「象徴天皇として人びとに寄り添い、なぐさめ、祈り続けることで平成の天皇像を築き上げてきた」
(前出の宮内庁幹部)陛下にとって、天皇としての仕事が十分にできないまま、
天皇の地位にとどまることを潔しとされないのだろう。
元朝日新聞編集委員の岩井克己氏は14日付の朝日新聞で、
「務めを果たせるうちはベストをつくす」と負担軽減に消極的だった天皇陛下の姿勢を、
「積極的象徴天皇」観と表現した。
岩井氏は記事で、5年ほど前から、天皇陛下は大正天皇の病状の深刻化に伴い、
皇太子だった昭和天皇が摂政を務めた詳しい経緯や制度的背景について周囲に検討させたと明かした。
宮内庁書陵部から資料を取り寄せ、なぜ摂政しか認めていないのかといったことを丹念に調べさせたようだ。
5年前といえば、2011年2月に天皇陛下は心臓の周りにある冠動脈の精密検査を受けている。
このとき、部分的に冠動脈に血管が狭くなる狭窄が見つかり、翌年に心臓のバイパス手術が行われた。
つまり、陛下が高齢による健康不安や死生観を意識しだした時期と符合する。
皇室制度について、さまざまな角度から検証を始めた陛下について、
先の岩井氏は同じ記事中で、「皇室の制度と歴史的真実、現代と皇室の伝統について
科学者らしい手堅い思索を重ねてきた様子がうかがえる」と記した。
ところで、毎日新聞は、皇室ウォッチャーが気になる記事を掲載した。
天皇陛下の意向を受け、今年5月以降、宮内庁幹部が水面下で検討を進めていたというのだ。
風岡長官、山本次長らオモテの宮内庁トップ2と、陛下を私的に支える河相周夫侍従長らオクのトップ2人。
そこに皇室制度や歴史に詳しい元職員1人が加わった「4+1」で会合を持ち、
皇室制度の重要事項について検討と会合を重ねて、首相官邸とも調整を重ねてきたという内容だ。
「このOB職員は、宮内庁の指示で20年以上前から王室制度の調査のために欧州へ赴くなど、
研究を重ねてきた専門家です。小泉内閣が進めた女性・女系天皇に関する皇室典範改正問題のときも関わり、
今年春に定年退職しましたが、まだ宮内庁に残り、研究を続けています」(宮内庁関係者)
この6月の人事異動で、首相官邸では警察庁出身の杉田和博官房副長官を軸に、
各省庁からエース級の人材を集めた極秘検討チームを作っている。
その目的が、長年の懸案である皇族の減少に伴う、女性宮家の創設に関する皇室典範改正なのか、
「生前退位」や「摂政制度」に関するものなのかは、はっきりしない。
※週刊朝日 2016年7月29日号より抜粋
http://dot.asahi.com/wa/2016071900214.html

「生前退位」実現で皇室は新たな危機に? 元宮内庁職員が警告
(更新 2016/7/20 07:00)
13日にNHKが報道した天皇陛下の「生前退位」の意向は、国民に大きな衝撃を与えた。
現状では「憲法上の問題から(皇室典範改正を伴う)生前退位は無理だ」(官邸の政権幹部)ということだが、
もし実現すれば、安倍政権、そして天皇の在り方にも影響を及ぼす。
首相官邸は天皇陛下の意向を尊重し、典範改正など必要な法整備に向けて検討を始め、
来年の通常国会で必要な法改正を目指す方針との情報も出ている。
宮内庁幹部は「政権との調整がこれから始まるタイミングだっただけに、うまくいかないおそれもある」と話す。
政治部記者が言う。
「参院選の勝利で地盤が固まった安倍政権としては、緊急事態条項を含む憲法改正に向けて議論を始めたい。
より安定した政治環境をつくろうと、年末までに衆院の解散・総選挙に打って出る可能性もある。
現政権は、女性宮家創設を含む皇室典範の改正に消極的で、どの程度進むのかは不透明です」
第2次安倍政権が発足して3年半が経過したが、皇室の制度改革は進まなかった。
政治的なエネルギーを要する典範改正に着手すれば、憲法改正が吹き飛ぶとの懸念があるのか。
逆に、官邸情報に強いNHKがスクープしたことで、政権が典範改正を突破口に、
憲法改正への機運を盛り上げるとの疑念が野党側に広がる。
仮に、幾つものハードルを乗り越えて、「生前退位」を含む典範改正が実現したとする。
そのとき、皇室は新たな危機にさらされると、元宮内庁職員の山下晋司氏が警告する。
「平成の象徴天皇としてふさわしい働きができない、という理由で生前退位を認めたとしましょう。そして、
徳仁新天皇と雅子新皇后の仕事ぶりが国民の期待に応えないもので、
『象徴天皇としてふさわしいものではない』と評価された場合、次に『ふさわしい』
秋篠宮殿下に譲位しろとの声が起きかねない」
旧皇室典範は1889(明治22)年に、大日本帝国憲法と時を同じくして制定された。
元勲・伊藤博文らは、天皇が随意にその位を退かれるのはもってのほかと論じ、
天皇の終身在位の仕組みを作った。それは、天皇が政治的な思惑で「退位」に追い込まれたり、
退位した天皇が上皇として権力を振るう危険性を排除するためである。
国民の感情で判断する余地が生まれれば、究極には天皇の人気投票につながりかねないと、山下氏は危惧する。
「天皇陛下がご高齢で働かされてお気の毒」「早く退位の制度を整えてお休みになって」
天皇の「生前退位」報道が出ると、感傷的な声がテレビ画面や新聞の紙面を覆った。
だが、皇室制度の根幹をかきまわすような事態は避けるべきであろう。
1987年から87歳で崩御するまでの1年4カ月間、昭和天皇は病に倒れていたが、摂政は置かれなかった。
いまの天皇陛下と、皇太子さまが国事行為を昭和天皇に代わり臨時代行した。
摂政は、天皇が精神的・身体的に機能していないことが前提だ。あるジャーナリストはこう解説する。
「それは、周囲が天皇陛下は、たとえ何もできないとしても、在位してくださるだけでいい、
それこそが国民の敬愛にかなうのだ、と昭和天皇へ伝え続けたためです。
ところが今回は、天皇陛下が、『高齢で象徴天皇として十分に仕事ができない』という話が漏れ聞こえたとたん、
『お疲れ様』の大合唱が始まった。まるで『蛍の光』を大音量で流して、
舞台から強制退場させているふうにすら感じる。それはご本人の思いとはすれ違うような気もする」
天皇公務のさらなる軽減や、皇太子ご夫妻への大幅な仕事の引き継ぎなど、可能な範囲で対応できないのだろうか。
平成の天皇が、魂を注ぎ込むように築き上げた象徴天皇と、
二人三脚で歩んできた皇后の姿を、国民はもう少し見ていたいと感じているのではないだろうか。
※週刊朝日 2016年7月29日号より抜粋
http://dot.asahi.com/wa/2016071900223.html

週刊新潮2016年8月4日号
前天皇と比較される「新天皇」はやりづらい?〈生前退位の大疑問〉
国を象徴する唯一無二の存在である陛下も、
皇太子さまにとっては幼少のみぎりから背中を見て育ってこられた、
頼もしい父という面を併せ持つ。下世話に申せば、巷では隠居した先代と後継ぎの二代目は何かと比べられ、
時に粗探しまでされるもの。仮に陛下が身を引かれ、皇太子さまが新天皇と相成れば、
「陛下と皇后さまは、ともに公的ご活動からは完全にリタイアされるはず。
その面では、新天皇のお振舞いに不都合はないでしょう」
とは、さる皇室記者。が、むしろ国民の目が“難関”となりかねないという。
「“象徴の二重構造”が起こり得ます。皇室に関心が集まるのは結構ですが、先帝と新天皇がいらっしゃる場合、
国民の尊敬の対象が定まらなくなる。例えば被災地のお見舞いに新天皇が来られた時、
現場で『前の陛下にいらしてほしかった』などと、率直な感想が出てくる可能性は否めません」
(皇室ジャーナリストの山下晋司氏)
かてて加えて、
「ここ数年、雅子さまの問題もあって皇太子さまご一家には“公より私を優先する”とのイメージが
ついて回っている。これを払拭するとなると一朝一夕にはいきません。ご公務から退かれるとはいえ、
両陛下の近況は映像などで時折報じられることもあるでしょう。
そのたび世間は、まだ記憶に新しい陛下の現役時代を思い起こさずにいられないはずです」(前出記者)
新天皇におかれては、思いがけぬ試練が加わりそうな予感なのだ。
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/07301001/?all=1