「生前退位」のご意向について 識者の意見

2016.7.13 21:21更新
石原慎太郎元東京都知事「ショック…日本の象徴として天皇でいていただきたい」
石原慎太郎元東京都知事は13日夜のBSフジ番組「プライムニュース」で、
天皇陛下が、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」のご意向を示されていることについて
「ショックだ。災害地への慰問、太平洋戦争の犠牲者への慰霊で、相当、お疲れになったのはわかる。
私は陛下より一つ年上だが、それでも頑張っている。
本当に陛下には、もうちょっと頑張っていただきたい」と述べた。
その上で「摂政という形など、歴史の事例がたくさんある。
陛下に日本の象徴として、天皇でいていただきたい」と求めた。
陛下が生前に退位された場合には
「憲法問題になってくる。予測はつかないが、日本の社会に大きな混乱が起こる」とも指摘した。
http://www.sankei.com/life/news/160713/lif1607130025-n1.html

政府は「大河の流れ」を見てお言葉を考えよ 
ジャーナリスト・櫻井よしこ
2016.8.9 07:01更新
【天皇陛下「お気持ち」】
政府は「大河の流れ」を見てお言葉を考えよ ジャーナリスト・櫻井よしこ
穏やかな、理性的な表現ながら、率直なお心の表明だった。多くの国民の共感を呼ぶようなメッセージであった。
とりわけ、「国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、
幸せなことでした」と過去形で述べたことや、
摂政を置くことについて「天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、
生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません」とされたくだりには、強いご決意を感じた。
今回の事柄を、現行の皇室典範の枠の中で改定することを否定されていることも感じた。
国民の側としては、よくよく考えなくてはいけない。
譲位、退位については、明治憲法のときも伊藤博文らにより論じられ、
「ない方がよろしい」と決まったことも忘れてはならないだろう。日本国の安定した未来のための選択であったはずだ。
こうした歴史や、過去の歩みに基づいて、国民にも政府にも冷静な判断が求められる。
退位は時に政治的な意味合いを持つ。それをきちんと認識すべきで、政治的な利用は排除されなくてはいけない。
昭和天皇の独白録や実録によれば、昭和天皇は内々では明確な意見を持ち、それを言葉にしながらも、
公には立憲君主として自制的かつ自律的に振る舞われていた印象が強い。
こうした立憲君主のお立場は、日本国の国柄として大事にしなくてはいけないものである。
同時に、天皇陛下のお気持ちは、個人として話されたことであるが、軽んじてはならない。
天皇の譲位を国として避けてきた歴史を踏まえながら、どこまでお気持ちをくみ取れるのか。
冷静に国民みんなで考えるべきだ。陛下がおっしゃった結果、皇室典範などを変えるという結論になるのは、
よほど慎重でなければならないだろう。政治的利用の余地が生まれる可能性があるためだ。
また、広く使われている「生前退位」という言葉には違和感がある。
退位は当然生前に行うものであり、譲位という言葉を使うべきではないだろうか。
それはさておき、報道各社のアンケートによれば、多くの人が陛下のお考えに理解を示している。
今回の映像を見て感じたのは、自らが思い描いた天皇像を実践してこられた誠実さだった。
そのお気持ちを目の当たりにした国民は、陛下が国民のことを考え、
働いてくださっていることを、心からありがたいと理解するはずだ。
陛下は国民に寄り添いたいと考え、それを実行されてきた。
天皇の存在は「存在しているだけで意味がある」という意見もあるが、
国民に寄り添うために遠方の地まで出かけていかれる行動や思いには万人の心にしみ入る尊さがある。
政府は、悠久の歴史を引き継ぐ、ゆったりと長い大河の流れを見るようにして、
このたびのお言葉について考えなくてはならない。軽々な変化は慎むべきだ。 (談)
http://www.sankei.com/life/news/160809/lif1608090010-n1.html

天皇陛下の退位御意向で核心的問題になること
2016年08月08日 06:00
八幡 和郎
生前退位の意向を周囲に示されている天皇陛下は、
象徴としての務めについてのお気持ちを8日午後3時からビデオメッセージの形で表明される)。
そののち、安倍首相の談話も出されるとも伝えられている。
お言葉の内容が明らかになってから改めて投稿するが、本日は、問題の所在を少し書いておきたい。

まず、なぜ退位なのかといえば、超高齢まで存命の君主が増えてきて、
従来のように摂政で短期間しのぐということが実情にそぐわなくなってきたからだ。
そこで、オランダ、ベルギー、スペインであいついで譲位が行われた。
また,ローマ法王ヨハネ・パウロ二世は生前退位はされなかったが、延命治療を回避されて亡くなった。
その反省もあってその後任のベネディクト16世は実質上、はじめての生前退位をされた。
実際的にも、摂政に対して国民も外国人も君主と同じような権威もありがたみも持たないから
国民統合の象徴としての力もなくなるし、外交上の力も落ちる。
それならば、譲位した方が良いというのは理に適っているのである。

日本では、古代にあっては、だいたい30歳以上でなくては即位されなかったし、
そのかわりに譲位の習慣はなかった。ところが、大陸諸国との交流ができて、それに倣ったのか,
大化の改新のあと皇極女帝が弟の孝徳天皇に譲位された。
そののち、幼少でも即位されることが増え、逆に早々に譲位されて
上皇として窮屈な公務からは解放されて権力をふるいつつ自由な生活を送られることが多くなった。
しかし、明治になって、ヨーロッパの制度にあわせて生前譲位を否定し、皇后陛下という制度も確立した。
そのようにもともと、ヨーロッパンの制度にならったものだから
現在のヨーロッパでの動きに合わせるのは自然なことだ
(この点がもともと日本とヨーロッパで違う淵源の原則を持つ皇位継承問題とは違う)。

皇室典範改正の必要性
しかしながら、皇室典範には生前譲位についての規定がないし、
明治時代に議論のすえ否定していたものだから解釈だけで乗り切るべきでなく、改正の必要がある。
それに対して、法律改正で対処しようという考え方もあるが、
これまで、皇室典範は形式的には法律と同格とはいえ、
憲法に準じる重みがあると理解されていたのだから、私は適切でないと思う。
とくに、問題先送りをしない姿勢の安倍首相にはふさわしくない。

必要なことは、まず、①「譲位の制度を創設し、その要件を定める」ことである。
そうでないと、政治的圧力による退位を誘発したり、
可能性としては、天皇の我がままによる退位というようなこともありえないわけでない。
ただし、憲法が生前譲位を予定してないのではないかという議論もある。
しかし、終戦後、昭和天皇の退位が議論されたことはあり、
そのときに、憲法で予定されていないからダメだということではなかったと思う。
政治的意図による退位を防止するような工夫を皇室典範で定めればいいのではないか。
②譲位したのちの今上陛下の称号を決める必要がある。上皇か太上天皇かだろう。
ちなみに、ヨーロッパでは譲位しても肩書きはそのままだ。
③皇位継承第一順位となられる秋篠宮殿下と悠仁親王の扱いを決める必要がある。
皇室典範では、〈第八条 皇嗣たる皇子を皇太子という。
皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という〉とあり、改正しないと皇太子不在になる。
そこで、皇太弟とか皇太甥(甥の音読みはセイかショウ)と呼ぶかだが、これは皇太子、皇太孫で良いと思う。
皇太子とは伝統的には立太子礼を経た親王の称号だが、鎌倉時代には皇子でなくとも立太子礼をしており、
そのあとは、江戸時代まで立太子礼が行われなかったのであって、
秋篠宮殿下が立太子されて皇太子,悠仁親王が皇太孫と呼ばれることは不自然でない。

以上は最低限必要なことだ。しかし、安倍首相のような安定した権力をもっているとすれば、
そこに留まっては惜しい。

皇統維持のために布石を
秋篠宮殿下を皇太子、皇太孫とすることは、将来、皇室典範を改正して女帝や女系天皇を認めても、
悠仁さままでは継承順位を変更しないことの表明に近い効果を持つだろう。
つまり、すでに立太子されている皇太子や皇太孫を除外して女帝を立てるというのは普通には考えにくいからだ。
しかし、それだからこそ、皇位継承に混乱をもたらさないためにも好ましいのではないか。
たとえ女帝や女系の天皇を認めるにせよ、それは、ほかに適当な選択がないときでないと
国民統合の絆であるはずの皇室が分裂の原因になってしまうのは避けるべきだ。
もし、悠仁さまのあと男系の子孫がいなければそのときに議論すればいいことだ。
しかし、問題は別の所にあると思う。現在、陛下は82歳、皇太子殿下は56歳、秋篠宮殿下は50歳、
悠仁親王は9歳である。仮に陛下がきりのいいところで85歳で譲位されるとして、
皇太子殿下も26年後に同じ歳で譲位されるとすれば、そのときは誕生日が来ているかどうかで微妙に違うが、
秋篠宮殿下が79歳で即位され、そのとき、悠仁さまは35歳である。
そして、その6年後に秋篠宮殿下が41歳の悠仁さまに譲位されることになる。これを①とする。
しかし、これは、やや不自然だから、②もう少し早めに皇太子殿下が秋篠宮殿下に譲位されるか、
あるいは、③皇太子殿下から悠仁さまに直接譲位されるかが考えられる。
そこで、①②③のどれかを念頭に制度をつくるか、
あるいは、どの選択肢も可能なようにするかを考えるべきだ。

私はいずれの選択肢も可能なようにしておいた方がよいと思う。
というのは、ベルギーではボードアン国王から弟のアルベール殿下の
このフィリップ王子に直接継承させるつもりで帝王教育がなされていたが、
ボードワン国王が意外に早く死去されたので、急遽、アルベール殿下が即位された。
フィリップ殿下が年齢は33歳くらいだったが、まだ未婚だったからだ。
やはり、未婚の天皇というのはできれば避けて、結婚されて家庭的にも安定するのを待った方が良い。
そのあたりを考えると、こうすると決めずに、
いかようにも対応できるような芽くらいは出しておいた方が良い気がする。

皇族の人数不足の解決に知恵はあるか
また,皇位継承は別にしても、皇族の数が減っていることは、
公務や各種団体の総裁などのなり手がないという問題がある。
とくに、秋篠宮殿下が皇太子になられると、殿下や妃殿下もこれまでの慣例から言えば、
団体総裁などはできなくなる。
このあたりも考えると、なんらかの形で皇族の数を増やすか、
あるいは、皇族の身分でなくとも公務などを行えるようにしたい。
その場合に候補は、「結婚後の女性皇族」と「旧宮家関係者」しかないわけだが、
どちらなのかで厳しい議論がある。私の意見は、皇族を増やす前に、
まず、公務などを結婚後の女性皇族と旧宮家関係者と「両方」にやってもらうことから始めれば良いと思う。
どちらにも皇室との関係をもっていただいておけば、将来、どのようにするかの知恵も出やすくなる。
肩書きは宮内庁参与かなにかで良いではないか。
また、皇族でなくとも、海外ではプリンスとかプリンセスとか名乗っても
諸外国の制度との整合性から言っても、なにもおかしくない。
そのあたりまで、安倍首相のもとでレールを引いて、あとは、後世の人にゆだねてもいいと思う。
なお、皇室典範の改正について有識者会議を設けるという意見もあるが、
皇位継承問題のときにそうした軽い位置づけの場に重大案件をゆだね、
しかも、そのメンバーがいわば利害関係者も含まれていたことが混乱の原因になった。
その轍を踏まないためにも、まず、皇室典範の改正の手続き法でも創って、
そこに審議機関の設置を盛り込むベキでないかと思う。これはそれだけ重い問題なのだ。
http://agora-web.jp/archives/2020728.html

2016.08.16
ジャーナリズム
天皇陛下は「生前退位」のご意向など示していない…陛下に対し極めて不敬である
構成=横山渉/ジャーナリスト
8日の天皇陛下による「お気持ち」表明が波紋を呼んでいる。
メディアは一斉に天皇陛下が「生前退位」への強いご意向をお示しになられたと報じているが、
現行の憲法や皇室典範には生前退位に関する定めはなく、
実現のためには新法制定や新たな制度設計が必要となる。
これを受け、安倍晋三首相は「重く受け止めている」
「どのようなことができるのか、しっかりと考えていかなければならない」と語り、
政府としてなんらかの対応を行う意向を表明し、
与党内でも特別法制定に向けた動きが出てきているとも報じられている。  
一方、実質的に天皇陛下のご意向を受けて政治の側が動き始めており、
天皇の政治的活動を認めていない現行憲法との整合性を問う声も上がっているが、
今回の天皇陛下のご表明をどのように解釈すればよいのか。
明治天皇の玄孫(やしゃご)で作家の竹田恒泰氏に話を聞いた。

問題提起
――竹田さんは、「退位」ではなく「譲位」という言葉を使うべきだとの意見です。
竹田氏 
「生前」は「死」を意識した言葉であり、陛下に対して不敬です。
譲位なら生前を前提とするので、不敬な生前という言葉を使わなくて済む。
退位はただ位を退くという意味。譲位は生前に皇太子へ譲ることを前提とします。
歴史の中で天皇が位を譲って上皇(太上天皇の略)になるという出来事は、
小中学校で学ぶことなので、譲位は多くの日本人が聞きなれた言葉のはずです。

――その譲位の意向とされる「お気持ち」表明を、どのように理解したらいいのでしょうか。
竹田氏 
まず、お気持ち表明の中で、天皇陛下は生前退位にも譲位にも一言も触れていらっしゃいません。
「辞めたい」とか「辞めるべき」などとはおっしゃっていませんし、
今のままでは象徴天皇としての役目を果たせなくなるということをお話しになっただけです。
その問題解決は「国民に一任なさると、問題提起なさったにすぎません。
もちろん、法改正や憲法改正などを示唆することも絶対にありません。憲法違反になってしまいますから。
問題が起きた後に知らせるよりは、その前に知らせるほうがいいのですから、
大変なご覚悟と準備があったものと推察できます。ご自分のことは差し置いて、
国民のため、国のため、将来の皇室のためにご決断になったことですし、本当にありがたいことです。

プロセスが大切
――では、議論を託された国民の1人として、竹田さんはどうすべきだとお考えでしょうか。
竹田氏 
形式的には答えをおっしゃらず、将来起こるかもしれないことについて問題を提起なさいましたが、
譲位について内心思うところがおありになると察することができます。
陛下がかりに譲位を望んでいらしたとしても、日本は民主主義国家ですから、
国民が「天皇を続けていただきたい」と思えば、陛下もそれをお受けになるでしょう。
君民一体というのが歴史的な皇室のあり方です。
ですから、もっとも大切なのはプロセスです。結果的に同じ結論を出すにしても、
「陛下がこうおっしゃったから」と議論せずに決してしまうのはダメで。それでは絶対王政になってしまう。
今の報道のあり方を見ていると、議論させないように見えます。
議論の結果、譲位を実現するのもしないのも、どちらも間違いではありません。
現実には、譲位していただく道を開くか、現状維持で務めを果たしていただくか、この2つしかありません。
陛下もメッセージの中でおおせでしたが、幸いにも今はご健康で務めを果たすことはできるけど、
将来的にはどうかということです。

――お気持ちの中で、お務めの量を減らすには限界があるとしています。
竹田氏 これは、歴代の天皇によっても考え方が違うかもしれません。
たとえば、昭和天皇は長い間病床に伏していらっしゃった。
あのとき、一分一秒でも長く生きていてほしいと国民は思いました。
病床にあって天皇としてのお役割を果たしていらっしゃらなかったかといえば、そうではありません。
果たしていらっしゃったのです。「職務を果たしてないから辞めろ」などと思った人はいないはずです。
内閣の書類に署名なさらなくとも、象徴として存在する、これも答えだと思います。
今回、陛下が直接「お気持ち」を表明なさったことで、「ご意志の通りに」という意見が多くなり、
「退位されたら寂しい」「もっと続けていただきたい」という意見は陛下に反抗するようで、
言いづらくなっています。でも、どちらの国民の声も正しいのです。

特別立法で対処すべき
――政府は特別立法で対処する方向だと報じられています。
竹田氏 
私は、7月13日にNHKが生前退位に関する第一報を報じた直後から、
特別立法で対処すべきだと言い続けています。
この200年は認められていませんが、譲位には歴史的にさまざまな問題がありました。
天皇の地位を退いた方が政治に関与し、平安時代には上皇が権勢を振るったということもありました。
政治権力者が天皇の意思に反して退位に追い込んだり、
天皇が絶妙なタイミングで退位を宣言することで政治に圧力をかけることもありました。
私たちは、そういう歴史上の過ちを繰り返してはならないのです。
今回、これをきっかけに譲位という制度を盲目的につくってしまった場合、
内閣が退位を決定するということも起こりえます。
今上天皇の場合、先ほどの3つの可能性はどれもまったく考えられませんし、
特別措置として一代限りで行うべきであって、皇室典範に組み込むべきではないと考えます。

――このタイミングで同時に女性天皇や女系天皇、女性宮家の議論もすべきとの意見もあります。
竹田氏 
すべてお門違いの話です。悠仁親王殿下がいらっしゃるのに、
歴史的に正当性のない人を天皇に据えるような議論をするのはおかしい。
また、女性宮家の問題は、天皇が高齢になって公務が大変だけど、
皇族が減るのでどうしようというところから出てきた。
今回、譲位の話が進めば、公務軽減の話が根本から必要なくなるわけです。
(構成=横山渉/ジャーナリスト)
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16287.html


(耕論)国家の象徴とは 河西秀哉さん、瀧井一博さん